広島大学附属福山中学校
1999年度総合的な学習「LIFE」( Learning, Identity, Feelings, Ecology )の概要

創出の視点


新しい学習指導要領が公表され,国際化,情報化をはじめとする社会の変化に主体的に対応し,21世紀を豊かに生きていく人間を育てる教育のあり方が大きな課題となっている。従来型の学校教育では,既存教科の枠内でいかに効率よく知識を習得させるかを優先した,生徒にとっては受け身的な学習が多くを占めている。しかし,学習指導要領に示されている新しい社会に対応した「生きる力」を育むためには,課題の発見・探究といった自ら学び自ら考える「自己学習力」や「自己の生き方」についての自覚を深める教育内容の具体化が大切であると考える。特に,「生きる力」を培う上で「総合的な学習」をどのようにとらえるのか,どのような教育課程を構成していくのかが,重要なポイントとなる。

「生きる力」について考えるとき,それは教えられて身に付くものではなく,実際のこどもたちの学習活動において,それが発揮・活用される場面や仕組みをいかにつくっていくのかが大切であり,そのための具体的な単元やカリキュラムを開発していくことが必要となってくる。

前項(第2部)に記載しているように,当校では以前から自己学習力の育成や学びの拡がりを視野においた多様な学習活動を展開している。それは生徒の選択による課題探究学習,実験実習を多く取り入れた体験的な学習,実際に現地に出かけての野外学習,自然観察,環境学習,社会見学といった内容であるが,学びを拡げ,教科の枠を超えて学びのつながりを求める総合的な学習であり,「生きる力」を育む実践であると言える。

以上のような考えに立ち,当校での「総合的な学習」の試行にあたっては,下記の5点を考慮しながら研究実践をしている。

  1. 既に当校で実施されている総合的な学習内容を含んでいる実践を新学習指導要領に示   された教育のあり方を考慮しながら,再編・再構築をする。また,遠足や社会見学旅   行などの行事を総合学習と関連させ,そのフィールドワークとしての活用を検討する。
  2. 課題の発見・探究,情報分析,問題の解決,まとめと発表・自己表現,コミュニケー   ション,自己評価といった総合的な学習の学びの意味(知の統合)に視点を置いた単   元やカリキュラムを開発する。
  3. 個々の課題やテーマについて,知識を「覚える学習」ではなく,自ら考え解決してい   く「自ら学ぶ学習」を仕組んでいく。
  4. 体験的な学習をとおして,豊かな感性や創造性を育み,学びの楽しさや喜びを実感で   きる学習活動を創造する。
  5. 生徒の学習や生活の実態から課題を捉えて,教育内容に反映する。
  6. 中学校3年間の総合的な学習で,総体として「自己学習力」や「自己の生き方」につ   いての自覚を深め,「生きる力」を育む教育内容を創造する。
総合的な学習の推進体制  
 
 
 

「LIFE」の実施形態(1999年度の試行)
(本年度は各学年とも週一時間の学校裁量の時間を当てて試行する)

1年生・・・学年共通の内容でクラス単位で実施

2年生・・・テーマ別の探究学習(生徒の選択による),2つのテーマにより実施

3年生・・・テーマ別の探究学習(生徒の選択による),3つのテーマにより実施
 

「LIFE」の概要とねらい

  1. 課題の発見・探究などの活動をとおして特に「学び方」や「生き方」についての自    覚を深める。
  2. 学びの成果を表現・伝達し共有するといったコミュニケーション能力を培う。
 

総合的な学習「LIFE」の全体像
 
 
 
中学1年 《「学び方」を学ぼう(学びの基礎1)》
中学2年《課題を探究しよう(学びの基礎2)》
テーマ 選択
環 境 学 習 数理的な課題の探究
中学3年 《課題を探究し,表現しよう(学びの拡がり〜表現活動とコミュニケーション〜)》
テーマ 選択
文章で表現しよう 
(郷土の文学をと 
おして)
卒業論文をつく 
ろう
情報を分析し, 
自分の意見を持 
とう
音楽で伝えよう 
(平和への思い 
を三部作に)
※総体として「自己学習力」や「自己の生き方」についての自覚を深め,「生きる力」 
を育む。