広島大学附属福山中学校総合的な学習の実践

総合学習のテキストをつくる


校内植物図鑑「福山附属植物物語」の刊行について

この度,広島大学附属福山中・高等学校では野外活動や総合的な学習を支援するために,「福山附属植物物語」と題する小冊子を刊行した。

当校は,多くの植物が生育する緑豊かな学校である。校地北側には落葉樹のクヌギと常緑樹のアラカシが混生する林が発達している。校内の至る所に万葉植物など多様な植物が植えられ,四季折々の美しい景観を観ることができる。校地中央と周囲には約一千株のバラが華に咲くバラ園があり,生徒・教職員をはじめ市民からも親しまれている。また,1953年の第1回卒業以来,毎年記念植樹されており,今年(1999年)で47回目を数えた。これら校内に生育している樹木228種類については,「みどり−校内の樹木」(1988・1996年)という冊子に詳しくまとめられており,理科と国語科を中心に教材として大いに活用されてきた。具体的には,理科では植物観察やグリ−ンオリエンテ−リングに,また,国語科では古典の野外活動に利用されてきた。

1999年,校内に生育する植物,特に万葉植物について,私たち人間との関わりの視点でもう一歩深めて見つめ直して作製したものが,この「福山附属植物物語」 である。この小冊子は,「みどり−校内の樹木」で得られた成果を生かしながら,それを内容的に更に広がりをもって発展させたものである。万葉植物(69種類)について,従来のような単なる植物学的な記載や万葉歌の解説だけで終わるのではなく,勿論それら両者を相互に関連づけたうえで,植物を人間生活とのかかわり(衣・食・住・医)の側面から捉え直してある。一部の植物については,実践的な調理方法も具体的に紹介してあり,「見る人」それぞれの興味や関心に応じて,植物から多面的なことを学びとることが可能となる。

本冊子の特徴は身近な植物に直接親しみを抱くことができるように,たくさんのオリジナルカラ−写真を使用している。また,その植物が校内のどの辺りに生育しているのか分かるように,校内分布図もあわせて作製した。「身近な自然を調べる」実践例として,校内の植物を1年間継続観察した「春夏秋冬」も同時に報告してある。従って,各教科の専門性に強く裏打ちされたうえで,植物と人間とのかかわりについて楽しみながら総合的に学ぶことができる,言うなれば,身近な植物を通して自然とのコミニュケ−ションが楽しめる野外観察のテキストである。さらに,この冊子をデジタル化し,HTML形式のCD−ROM版も制作した。

今日の大きな教育課題である「生きる力」の育成や教科の枠をこえた「横断的・総合的な学習」に大いに活用できうるものと考えている。

「植物観察・学校の樹木に親しむ」 

「万葉植物」

生活との関わり「ドングリパンを作る」

学校ばら園「福山附属のバラ」

「CD−ROM版のトップページ」

     「福山附属植物物語」の表紙