金沢大学教育学部附属中学校の実践事例 |
住 所 | 金沢市平和町一丁目1番15号 | 郵便番号 | 921-8105 | ||
電 話 | 076-226-2121 | FAX | 076-226-2122 | http://futyu.ed.kanazawa-u.ac.jp/ |
総合的な学習を表すタイトル |
今を見つめ 明日を創る生き方を求めて |
キーワード |
未来を創造する力,自己決定力,生きる力,判断力,表現力,情報活用の実践力,スキル学習,課題追求学習,横断的・総合的 |
総合的な学習に対する考え方 |
大きく変化する現代社会の中で,子どもたちが必要としている生きる力を育むためには,横断的・総合的な学習が必要である。 |
総合的な学習の目標(目指すもの) |
各自が各自の生き方を作っていくために,次のようなことができるようにする。
・自己決定力をつけることにより,自分とのかかわりでものごとを考えることができるようにする。 ・情報活用の実践力をつけることにより,情報を収集し,真に必要な情報を取捨選択し,主体的に自らの考えを築き上げ,自ら情報を発信できるようにする。 |
総合的な学習の実践形態 |
平成9年度の実践形態 ・1年:コンピュータ教育 ・2年:コンピュータ教育の継続と3年次の本格的な活動に向けての準備 ・3年:「金沢に関係すること」という大テーマにもとづく総合学習 |
推進組織 |
研究部,全教員による指導 |
文献 |
金沢大学教育学部附属中学校研究紀要第41号(1998) |
コメント(実践から参考になること) |
新しい社会を創り出すことになる生徒にとって必要な力とは何かを,十分に検討したうえで,総合学習の実践を行っている。そして,各自が各自の生き方を作っていくことができるよう,課題を生徒自身に設定させ,課題追求の方法も生徒自身に考えさせている。また,教科の枠に一切とらわれず,さまざまな教科の教員が実践の指導にあたっている点は,大きな特色である。 |
T.金沢大学教育学部附属中学校の総合学習とは |
金沢大学教育学部附属中学校の総合学習は,次のようなことを要点として進められている。 |
a.21世紀に生きる子どもたちが必要としている支援を行う。
〜生きていく上で必要な基礎・基本の知識を学ばせたり,文化を伝承していくことは,学校が行う重要な役割であるが,それだけでは子どもが必要としている支援を十分に行っているとはいえない。各自が各自の生き方を作っていかなければならなくなった現在,子どもたちが必要としている支援を十分に行うためには,「生き方探しを手伝う」「やりたいことを探させる」という側面をクローズアップしていくべきである。 b.自己決定力,情報活用の実践力を子どもたちにつけさせる。 〜これらの力は,各自が各自の生き方を考える際,非常に重要なものであるにもかかわらず,現在の子どもたちに欠けているものである。また,これら2つの力は内容的に一部重なっていたり,関連しているものである。したがって,これら2つの力はそれぞれ単独でつくということはなく,両方の力が関連しながらついていくものである。 c.教科の枠をはずし,子どもに問題意識を起こさせるような学習を行う。〜問題意識をもつことは,自分なりに自分で考えることにつながり,将来自分で生き方を考えることにもつながる。したがって,生き方探しを行うためには,子どもに問題意識を起こさせることが重要である。しかし,教科という枠におさまりきらない問題が出てきている現在,従来の教科という枠で系統的な学習だけを行っていたのでは,子どもの中で問題意識は起こりにくい。そこで,総合的な学習の時間では,教科の枠をはずすことも必要となってくる。 d.結果より過程を重視する。 e.知識を覚えることより,生きていく上で今後必要となる,知識の獲得の仕方(学び方)を学ぶことを重視する。 |
このような考え方に沿って本校では,3年次に「金沢に関係すること」という大テーマにもとづく総合学習を行っている。また1・2年次では,3年次の本格的な総合学習に向けての技術の習得や準備がおこなわれている。 |
U.金沢大学教育学部附属中学校の総合学習の実践例 |
1年生「コンピュータの時間」の取り組み |
a.時間の確保 |
1学期に週1時間 ←英語科が週4(3+1)時間の授業のうち,1時間分を1学期間拠出 |
(1年担当の理科教諭と英語科教諭2名が,ティームティーチング形式で担当) |
b.目標 |
(1)Windows95の基本操作ができること |
(2)ローマ字入力,日本語変換の操作ができること |
(3)将来,タッチタイプができるようになること |
(4)ワープロソフトで文書を作成できること |
こうしたことができるようになることにより,3年次の総合学習の際,コンピュータを自由に使い情報収集を行い,研究成果を作成・発表し,さらにはデータベース化できるような生徒を育成する。 |
c.学習の流れ |
第1回:部屋のきまり,Windows95の基本操作 |
第2回:前時の復習,今後この時間に行うことの説明 |
第3回:タッチタイプの意義,もぐらたたき |
第4回:もぐらたたきによるタッチタイプの練習 |
第5回:フロッピィディスクへの保存,日本語入力への導入 |
第6回:日本語入力の練習 |
第7回:ごたくどす問題作成のルール説明,文書作成開始 |
第8回:問題作り1 |
第9回:問題作り2 |
第10回:問題作り3 |
第11回:問題作り4 |
第12回:問題完成:ゲーム1 |
第13回:ゲーム2 |
学習内容・学習方法を設定するにあたり,留意した点は次のようになっている。 |
コンピュータ嫌いをつくらないように,ゲーム感覚を取り入れた内容ですすめる。生徒が 興味・関心をもって練習ができること,校内ネットワークについての理解をめざして,「ご たくとす」の問題作成を行う。(「ごたくとす」とは五者択一形式のクイズゲーム) |
2年「柏樹タイム」の取り組み |
「柏樹タイム」とは,金沢大学教育学部附属中学校における総合学習の時間の名称 |
a.時間の確保 |
3学期に計11時間 ←特別活動の時間と各教科から拠出 |
b.目標 |
3年生になってからの本格的な活動に向け,次のことができるようにする。 |
情報の収集・整理・編集能力を身につける。 |
生徒個人個人が持つ興味・関心に生徒自身が気づくことができるようにする。 |
生徒個人個人が持つ興味・関心と「金沢」を結び付けることができるようにする。 |
c.学習の流れ |
第1次:パソコンに親しむ…………………………………………3時間 |
〜3年になってからの活動をみすえて,コンピュータのワープロ機能を使う練習と,インターネットを使った情報検索の練習 |
第2次:オリエンテーション1………………………………1時間 |
〜3年になってからの柏樹タイムでの活動のあらましの紹介。研究テーマの設定の仕方についての話。研究テーマの設定にむけて3学期の柏樹タイムでは新聞のスクラップを行うことを説明。 |
第3次:新聞のスクラップ1……………………………………3時間 |
〜各時間に各自が1週間分の新聞をもってきて,興味・関心をもった記事を自由にスクラップする。 |
第4次:まとめ・発表……………………………………………………2時間 |
〜スクラップした記事のまとめを行い,自分のもっている興味・関心に気づかせる。発表を聞き,興味・関心の対象を広げさせる。 |
第5次:イメージマップ作り……………………………………1時間 |
〜「金沢イメージマップ作り」を行い,自分の興味・関心と「金沢」を結び付ける。 |
第6次:オリエンテーション2………………………………1時間 |
〜3年次の柏樹タイムの活動に対する心構えを確認。3年次の柏樹タイムは「金沢」に関わりのあるテーマで研究を進めていくことを確認。「金沢の〜についての記事を集める」というように,集める記事の分野を決めさせ,春休みの課題である新聞のスクラップの仕方を指示。 |
第7次:新聞のスクラップ2……………………………………春休みの課題 |
第8次:テーマ決定…………………………………………………………3年の初め |
3年生「柏樹タイム」の取り組み |
a.時間の確保 |
前期は週1回2時間連続,後期は週1時間 ←これまで行われてきた選択教科の時間をあてる |
(9人の教官が指導教官となり,教官1人当たり16人から19人の生徒を担当) |
b.目標 |
生徒個人個人が設定したテーマの調査・研究,プレゼンテーションなどを行うことにより,自己決定力,情報活用の実践力をつけさせる。 |
c.学習の流れ |
第1次:オリエンテーション……………………………………1学期初め |
〜3年次での柏樹タイムでの活動のあらましを紹介。研究テーマ設定のヒントを与える。 第2次:研究テーマの設定…………………………………………1学期前半 |
〜教官と相談をしながら,研究テーマを設定 |
(「金沢に関係すること」という大きなテーマのもとで,生徒個人個人が自分の興味・ 関心にもとづき具体的なテーマを設定) |
第3次:調査・研究…………………………………………………………1学期後半と夏休み |
〜図書館,インターネット,電話・手紙,校外への取材活動等により情報を収集し,研 究を進める。 |
第4次:まとめ……………………………………………………………………2学期 |
〜ノートでのまとめ,模造紙による掲示物でのまとめ,テープでの音楽作り,焼き物作 りなど,さまざまな形で活動のまとめ。 |
第5次:プレゼンテーション……………………………………2学期末 |
〜11月の文化祭での展示発表,12月に入ってからの指導教官ごとのグループでの口頭発表 |
研究テーマの例(一部抜粋) |
「金沢の方言」「百万石祭りの歴史」「加賀百年の自治」「金沢の人口の変化」「金沢のバス」 「金沢の魚」「金沢の天気」「民話を英語で」「箏を使って金沢の曲を」「金沢の和菓子」 「郷土料理」「九谷焼」「金沢のサッカーの歴史」「金沢で学ぶ留学生」「犀川の水質」 |
「情報社会に生きる僕達 金沢からの発信」「金沢の障害者にまつわるもの」「金沢のゴミ」 「金沢とコンビニ」「金沢の温泉」「金沢のおすすめスポット」「金沢出身の芸能人(有名人)」 |
V.総合的な学習の時間の持ち方についての今後の見通し |
金沢大学教育学部附属中学校では総合的な学習に関して,今後,次のような見通しを立てている。 |
a.スキル学習について ・情報の共有化 〜スキルについて,教官と生徒の情報の共有化をはかるため,スキル学習のプリント化,ガイドブックの作成をしていく ・スキルの内容分析と指導分担 〜スキルの内容を分析し,教科・柏樹タイム・その他の時間で教える部分を分けていく b.今後の柏樹タイムの学年別内容についての基本方針 1年:コンピュータの基礎操作を含む,スキル学習を主たる内容とする 2年:スキル学習の続きと,大きなテーマを与えた課題追求学習を行う 3年:必要に応じてスキル学習を行い,大きなテーマを設けない課題追求学習を行う |