福井大学教育地域科学部附属中学校の実践 |
住 所 | 福井市二の宮四丁目45番1号 | 郵便番号 | 910-0015 | ||
電 話 | 0776-22-6985 | FAX | 0776-22-6703 | http://jhssrvl.fukui-u.ac.jp/ |
総合的な学習を表すタイトル |
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キーワード,分類 |
学年プロジェクト,ネットワーク,学びのサイクル,異学年交流,実践の世代継承 |
総合的な学習に対する考え方 |
国際理解・情報・環境・福祉・健康といった主題がまずあるのではない。本来総合的な学習は教科ではなく,生徒の思いや願いを大事にしながら,教師も試行錯誤を繰り返しながら共同で創造していくものと考えられるべきである。 |
総合的な学習の目標(目指すもの) |
最初の課題意識から始まる発意,それをふまえた分析・構想,そして実行・実践,最後に省察・自己評価というサイクルを回しながら,生徒達は自らの主題を深め追究していく。生徒の興味関心から主題を設定し,自ら主体的に学んでいくことが重要であり,そのような学びからこそネットワークが生まれると考える。 |
総合的な学習の実践形態 |
1年5月 宿泊学習【学年プロジェクトのオリエンテーション…学級,学年討論会に向けた活動】 ↓〈共同的学びの基礎づくり〉 10月 文化祭学級企画【主題の効果的表現…資料・表やグラフの作成能力育成】 ↓〈テーマ設定→計画立て→情報収集と展示→分析と振り返り〉 3月 1年調査活動【個人テーマ追究型調査活動…調査活動に伴う探究する力の育成】 ↓〈テーマ設定→グループ設定→計画立てアポ取り→実地調査→分析と振り返り〉 2年5月 文化祭企画の調査活動 【制作・企画実現に向けた調査活動…ディベートを組み込んだ活動】 ↓〈テーマ設定→グループ設定→計画立てアポ取り→実地調査→報告会と振り返り〉 10月 文化祭学年企画【個性的・効果的表現…素材や技法・表現方法を工夫して構成】 ↓〈企画内容検討→計画立て→情報収集と制作→実地調査→分析と振り返り〉 3月 修学旅行調査活動【全体テーマとの関連を図った個人テーマの追究型調査活動】 ↓〈全体・個人テーマ設定→事前発表→テーマの見直し→計画立てアポ取り →実地調査→分析と振り返り〉 |
文献 |
・福井大学教育地域科学部附属中学校研究紀要第27号(1999) ・福井大学教育地域科学部附属中学校研究会著(佐藤学序,中野重人推薦),『探究・創造・表現する総合的な学習』,東洋館出版社,1999 |
コメント(実践から参考になること) |
学年の取り組みとして総合的な学習をとらえ,1年間の中で一つのサイクルを繰り返し,それぞれのサイクルを連続した形で構想させることで,生徒は自らの主題を確実に深め追究できるように考えられている。 |
1.学びのネットワークとしての学年プロジェクト |
この学校の総合的な学習は学年プロジェクトとして進んでいく。宿泊学習から文化祭学級演劇活動まで,学年集団としての学びが積み上げられていくようにネットワークが構成されている。体験・制作・調査活動といったようにその活動形態も様々である。たとえジャンルは違っていたとしても,一つの活動の成果が次の活動に生かされ,繰り上がっていく事を大切にし,学びのネットワークを図ろうとしている。1年生の調査活動が2年生の修学旅行での主題研究の土台となり,さらには3年生の演劇での表現活動となる。3年間の学びのサイクルを連続した形で構想させようとする学年プロジェクトの活動である。このような繰り返し・ネがら繰り上がる実践の重層は,一つの共同体としての学年の文化を育むと共に,新しい学校文化を創造していく。 |
このプロジェクト活動は,教科学習のネットワークにも支えられている。1年生での福井調査は,郷土の社会や自然への認識を新たにしていく活動であり,インターネットを駆使しての情報学習でもある。社会科,理科,技術・家庭科など,関係する教科学習での知識や経験が組織・統合されて豊かな探究・創造・表現活動が展開される。子どもたちの主題に基づいた共同学習が,必然的に教科同士のネットワークを形成する。教科どうしがモザイク的に結合されるのではなく,子どもたちの追究主題に沿った教科の知識が,子どもの中で再構成され獲得されていくプロジェクトを目指そうとしている。 |
また今後の活動の展開を見通すとき生かされるのは,それまでの自分たちの活動だけではなく,先輩たちの活動の過程や発表もまた自分たちの活動のイメージを作っていく手助けとなる。こうした実践の世代継承的なサイクルの省察的再構成的な積み重ねが,本来の学校文化を豊かなものにしていく作用を果たしている。 |
2.学年プロジェクトを位置づけた授業時間数 |
3.探究・創造・表現する総合的な学習 |
「探究」 | ○現代的,生活的な課題に対する明確な問題意識に支えられた探究活動 |
○現実の社会や自然,人との深い関わりが生じる探究活動 | |
○社会参加や道徳性の発達につながる主題の共同的探究活動 | |
「創造」 | ○自分たちと社会との関わりを見直し,よりよい自分たちの生き方を創造していこうとする活動 |
「表現」 | ○自分たちの学びの成果を学校や地域社会に対して,多様な表現方法で提案していこうとする活動 |
探究する力を学ぶ1年調査活動 |
1学年では,福井県内での調査活動を通して,環境・福祉・交通・国際化などの生活課題の探究を行い,福井の発展を構想していく。ここでは,テーマ設定・追究内容・追究方法の練り方や研究成果の表現の仕方,アポイントメントの取り方,応対マナーなど,調査活動に必要な探究方法の習得を重要なねらいとしている。 |
文化祭学年企画「Recycle Festival」 |
環境問題解決の方策として,子どもたちは自分たちの身近な生活スタイルの改善を第一にあげた。その具体的な方策として,リサイクル活動に自らも参加するという形で,この文化祭学年企画が実現した。実践を通して,子どもたちは,環境問題をより身近なものとして再認識すると共に,その解決には何が重要か,また自分たちには何ができるのかを主体的に考えていくようになった。 |
探究としての旅 |
2学年では,1学年で習得した調査活動や探究の方法をもとに発展的な調査活動を行い,身の回りの地域社会に提案していく。遠足や修学旅行を利用しフィールドを広げ,地方の中枢都市や政令指定都市あるいは首都圏を各自のテーマに基づき実地調査をし,1年時の課題追究の成果と比較しながら,福井の未来を提言していく。この研究成果は提言集として製本化し各教科学習で活用を図る。また,提言集をもとに地域社会にも発信する。 |
主題と情感を追究する演劇活動 |
子どもたちが主体となって主題と情感の追究を行い,自己の道徳性や倫理性,感性,芸術性,身体表現を高める総合芸術としての3年学級演劇を毎年10月の文化祭で実施している。子どもたちが2年間培ってきた文化や学年風土を開花,集大成させるものが3年演劇活動である。どんな主題を設定し,何をどのように探究していこうとするのか,2年間で培ってきた学年集団の学びそのものが問われ,反映されるものがこの演劇活動なのである。 |
創作音楽ドラマ |
1年生のとき,修学旅行体験を生かした創作音楽ドラマ「被災地・神戸の心」を歌う先輩たちの熱い姿を見た。そこに自分たちの将来を重ね,2年後,自分たちも神戸を訪れることを決意した。実行委員が中心となり,自分たちの修学旅行に向けて,「生きる」を主題に創作音楽ドラマに取り組んだ。修学旅行を終えて,現地での人々とのふれあいや震災学習などの体験,さらにはこれまでの学習体験を総合的に活用して,新たに人としての生き方を追究した。自分たちの追究成果を学校に還元し,地域に提案することをめざし表現する。 |
3年間にわたる継続性と発展性を見通して組織される学年プロジェクトの構想 |