大阪教育大学教育学部附属池田中学校の実践事例
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総合的な学習を表すタイトル
総合学習,国際理解教育
キーワード,分類
国際化,多様化,情報化,21世紀を切り開く,たくましく「生きる力」,国際理解教育,相互啓 
発,自己啓発,共生,自己表現,「自学・参加・実感」
総合的な学習に対する考え方
知識・理解から共感的理解へ深めていくためには,体験的な学習を取り入れた学習が必要である。表現力,コミュニケーション能力,課題解決能力など,国際理解教育独自の目標の達成も可能になる。総合的な時間の活用を,教科間選択の中の総合学習としてすでに経験しており,国際学級の設立に向け,「国際理解教育」というテーマの中心的学習単元としてアジアに焦点を当て,総合学習「アジアを実感しよう」を行う。そして,帰国生徒及び外国籍生徒が,一般の生徒と相互に影響を与え合いながら,「違いを認め合える学校づくり」を目指す。
総合的な学習の目標(目指すもの)
単なる知識や理解だけではなく,「生きる力」に結びつく資質や能力の育成。「教科,人,もの」にとらわれない,総合的な学力をつける。課題を見いだし,追求していく力をつける。 
適切な内容と方法で表現する力をつける。帰国生徒及び外国籍生徒が,一般の生徒と相互に影響を与え合いながら,「違いを認め合える学校づくり」を目指す。
総合的な学習の実践形態
(総合学習) 
・[総合1] 「アジアを実感しよう」2年生 
<国語・社会・数学・美術・保健体育・技術・英語・ALT> 
生徒の興味・関心に答え,課題追求の仕方や発表(自己表現)の方法を学ばせ,豊かな自己を確立させる。                                                                          
(教科間選択授業)

・[総合2] 「WASAN」3年生 
<数学> 
数学の教科内の総合的な学習から出発して,生徒の興味・関心や追求内容を他教科にも広げさせる。 
・[総合3] 「る・る・ぶ・る・る 理科」2・3年生 
自ら企画・運営し,共に学びあう理科の学習 
<理科> 
教科色が強いが,追求の方法としての総合的で多様な学力を育む。
[総合4] 「イメージを音楽で表現しよう!」2・3年生 
インターネットによるMIDIコラボレーション 
<音楽> 
教科色が強いが,インターネットで海外や国内の学校と情報を交流することで, 
従来の教科の学習方法だけでは身につきにくかった学力も育み,より確かな自己を確立させる。 
留意事項 
国際理解,地域理解,情報,環境などが課題 
体験,観察,調査,実験,発見,身体表現,まとめ,発表,問題解決的な学習

推進組織
教科・学年の枠を越えて,教師が協力して担当している。
文献
大阪教育大学教育学部附属池田中学校研究紀要(第40集)
コメント(実践から参考になること)
国際理解教育を中心に据えた総合学習であり,教科間選択学習においても同様の視点が生かされ
ている。また,生徒自身に学習の方針を立てさせ,発表・評価も生徒中心の指導計画になっている。「立案・計画」「研究・活動・調査・創造」「まとめ・発表」「評価」という各学習活動の流れが一貫してあり,「自学・参加・実感」という合言葉と「相互啓発」というねらいがどの指導にも前面に打ち出されている。
  
1「総合学習」実践例

[総合1]30時間 2年生

「アジアを実感しよう」相互啓発を目指した国際理解教0育

1.はじめに

国際学級設立を目指して

目的
帰国生徒及び外国籍生徒を受け入れるという,今日的な社会的要請に応えて いく。
帰国生徒及び外国籍生徒が,一般の生徒と相互に影響を与え合いながら,「違 いを認め合える学校づくり」を目指す。
課題 ハード面の問題

異質なものを受け入れ,認めていくソフト面,意識改革の問題

そのために,教師と生徒が一緒になって学習の課題に取り組み,実感を伴っ た国際理解教育のカリキュラムを創り出して行くこと。

 

キーワード      「自学・参加・実感」
2.指導上の留意点

1総合的な時間の活用を,教科間選択の中の総合学習として,ほぼ学年全員の生徒が履 修している。

2総合学習として国際理解教育というテーマに,内容的に真正面から取り組んでいる。

3教科・学年の枠を越えて,10名の教師が協力して担当している。

4国際理解教育としてアジアに焦点を当てて取り組んでいる。

5前半の追求活動は,生徒の希望に則り,国と地域を5つのグループに分けている。後 半は,表現活動のコースで6つに分かれ,最終的な学習発表会は元の国・地域別のグ ループで行う学習形態をとっている。

{前半追求活動・国・地域別5グループ}

中国・モンゴルグループ ・韓国・朝鮮グループ ・東南アジアグループ
南アジア・西アジアグループ ・アジア・NIESグループ
6研究主題「豊かな情報・文化を生み出す生徒」を重視し,表現活動に後半の15時間 を充てている。

7表現活動を6つのコースに分けて,情報の発信を重視している。

{後半・表現活動6コース}

意見主張コース ・研究論文コース ・マルチメディアコース
身体表現コース ・作品・製作コース ・実習・体験コース
8各表現コースは,最初の15分間は毎回基礎講座を開設し,状況に応じてすべてのコ ースの基礎部分を学習できるように配慮している。

9最後の学習発表会は,発表7分・質疑応答5分とする。国・地域別にグループごとの 学習発表会となるので,各表現コースがその特徴を生かし「相互啓発」できるぶつか り合いを重視している。

10学習発表会には「RealAudience(その国・地域の外国人・留学生)」の人にも参加して もらう。発表内容は「日本にもその国にもあって,違うもの。なぜ違うのか?」であ るので,生徒同士のぶつかり合いだけでなく,「RealAudience」とのぶつかり合いと相 互啓発を重視する。

2「教科間選択授業」の実践例

[総合2(教科間選択授業)]13時間 3年生

「WASAN」

1.設定の理由
自分の国の数学「和算」について学習し,自分の国の文化を知る。
池田にある3面の「算額」を見たり,「和算」の学習をしたことから,自分の関心の ある内容について個人で追求する。
追求したことがらを,わかりやすく説明,発表する工夫をすることで,プレゼンテー ション能力も高めていく。
2.設定のねらい
日本独特の数学「和算」や独特の風習「算額」について,興味・関心を持つ。
「和算」や「算額」を通して,自分が興味を持ったことがらを,いろいろな方法・手 段で調べる。
自分が設定したテーマについて,適した方法で,分かりやすく発表する。
日本独特の文化「和算」「算額」について知る。
3.指導計画
第1〜4時《体験しよう》 「算額」を見に行く 「和算」の話を聞く
第5・6時《調べよう,共通学習》 「池田の算額」について
第6時《選択》 各自の追求テーマの設定
第7〜11時 《自分の興味・関心に応じて自分の調べたいことを追求》
第12時《発表しよう》
第13時《まとめ評価》
[総合3(教科間選択授業)]26時間・2・3年生

「る・る・ぶ・る・る ☆ 理科」自ら企画・運営し,共に学びあう理科の学習

1.設定の理由
生徒が自分で課題を設定し追究する中で,意欲・関心の高まりがみられ,生徒一人一 人の自主性や,創造性が育てられる。
課題を達成したときの充実感・成就感。
学習の成果を発表する場を作ることで,教師−生徒間だけでなく,生徒−生徒間でも 評価活動が行われ,お互いに学び合う場になる。
2.学習の流れ

第 1 回 「オリエンテーション 相談活動」

第 2 回 「相談活動 企画会議」企画書配布

第 3 回 「プレゼンテーション資料作成」企画書の完成

第 4 回 「企画会議(発表・決定)」見学先との交渉・企画の説明・質疑応答

第 5 回 「事前打ち合わせ」企画細案の検討

番 外 「『人体の不思議展』見学」

第 6 回 「『神戸市立青少年科学館』見学」

第 7 回 「まとめ」各グループによるまとめ

第 8 回 「液体窒素とドライアイスを用いた実験」生徒による実験

第 9 回 「まとめ」前回の実験のまとめ

第10回 「『サントリーミュージアム(IMAXシアター)』見学と3D映画の体験」

第11回 「まとめ」「先輩から後輩へ,理科の楽しさを伝える」発表

第12回 「発表」「理科の楽しさを伝える」発表

第13回 「まとめ」感想・自己評価票の作成

[総合4(教科間選択授業)]26時間 2・3年生

「イメージを音楽で表現しよう!」インターネットによるMIDIコラボレーション

1.設定の理由
インターネットの活用により,コラボレーションのための情報交換を短時間で行える ことを実感させる場,及び活用方法を工夫させる場の設定。
外国の小学生・中学生とのコラボレーションによる,音楽を通しての異文化理解及び 音楽による国際文化理解の試み。
生徒の主体的な学習展開をめざした,意見や情報の交換の中で自己意志決定ができる 相互啓発の場の設定。
英語を用いた交流により,音楽の授業の中で,日頃学習している英語の能力が問われ るといった多様な表現力が要求される場の設定。
2.つけたい学力

1一つの画像について,自分の創った音楽と他者の創った音楽を聴き比べることにより, さまざまな感受を理解し,他者の文化を受け入れる姿勢を養う。

2積極的に意見や情報の交換をすることにより,そこで得たことを音楽創りに取り入れ ようとする姿勢を養う。

3インターネットを通して,距離的にも年令的にも離れた相手との関わりの中の音楽創 りを楽しもうとする姿勢を養う。

4インターネット活用時におけるルールやマナー(ネチケット)を常に意識し,その必要 性を理解し,遵守する態度を養う。

5視覚的な表現との関わりの中で音楽を創ることにより総合的な表現の能力を養う。

6必修授業では潤沢に活用できない機器やシステムについてのリテラシー能力を高める ことにより,自分の音楽表現やコミュニケーション,コラボレーションの道具として, その効果的な活用方法を工夫する姿勢及び能力を育成する。

7音楽の創作活動を行うことにより,それに関わる音楽の諸技能を高める。

3.学習指導計画
[意識化活動]
第1次 オリエンテーション 相談活動  (1回 2時間)
第2次 シミュレーション授業 グループ決め  (1回 2時間)
[意識化活動 ⇔理解活動] 
第3次 Virtual Classroomへの自己紹介の書き込み  (1回 2時間)
[意識化活動⇔ 理解活動 ⇔表現活動] 
第4次 メディアキッズへの自己紹介の書き込み (1回 2時間)
[意識化活動 ⇔理解活動⇔ 表現活動⇔ 確立活動]
第5次 交信 コラボレーション  (8回16時間)
第6次 報告会及びまとめ  (1回 2時間)