愛媛大学教育学部附属中学校の実践事例
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電 話 089-913-7841 FAX 089-913-7842  
総合的な学習を表すタイトル
総合学習A(地球市民的資質の育成),総合学習B(人間関係能力の育成)
キーワード,分類
豊かな人間性(総合学習A,総合学習B),地球市民的資質,自主協働
総合的な学習に対する考え方
今の子どもたちの抱えている心の問題に視点を当て,心の問題の中で,「生きる意味と目的の喪失」「人間関係能力の低下」の2点を取り上げ,その解決を目指すことで,豊かな人間性の育成に迫りたいと考えた。これらの問題の解決には9教科・道徳・特別活動で構成されている今の教育課程では十分に対応できないため,総合学習によってこれらの問題への対応を目指している。
総合的な学習の目標(目指すもの)
今の子どもたちが抱えている心に問題の中で「生きる意味と目的の喪失」「人間関係能力の低下」を取り上げ,それらを解決すること「生きる意味と目的を持たせる」「人間関係能力の育成」によって豊かな人間性の育成に迫る。
総合的な学習の実践形態
○総合学習A(地球市民的資質の育成)
 ・地球市民T(地球食糧問題)   社会+数学+理科+家庭科
 ・地球市民U(地球環境問題)   国語+数学+理科+保健体育
 ・地球市民V(地球平和問題)   社会+音楽+保健体育+英語 
 ・地球市民W(地球資源問題)   国語+理科+美術+技術
 ・地球市民X(地球人権問題)   国語+社会+数学+英語
○総合学習B(人間関係能力の育成)
 ・自主協働T「クラスの団結を図ろう」(学級)          
 ・自主協働U「クラスを越えた学年の輪をもち,広げよう(学級→学年)      
 ・自主協働V「応援合戦を成功させよう」(学級)          
 ・自主協働W「他学年との交流を始めよう」→「交流の輪を広げ,深めよう」(異学年→様々な方)
 ・自主協働X「心ひとつに・・・」(1・2年学級,3年学年)
推進組織
○総合学習A (1クラス1名)
・5つの講座における資料収集・授業設計・授業実施・評価を全教官が分担して行う。
・原則として講座の内容や学習活動と関係ある教科の教官による編成で,各講座4名で担当する。
○総合学習B
・企画・担当教官は活動内容と関係のある係活動または教科担当。
・活動の指導者は活動集団によって決定。
文献
愛媛大学教育学部附属中学校研究紀要第52号(1999)
コメント(実践から参考になること)
「自己学習力」「豊かな人間性」の育成をテーマに研究されている。総合学習では,「豊かな人間性」をテーマに物事を地球的視野でとらえ考える総合学習Aと,年齢・価値観・考え方等の異なる集団での活動で人間関係に関わる様々なことに直面させようとする総合学習Bの2つの形態をとっている。総合学習Bでは,学校行事とも関連させて取り組んでいる。総合学習A・Bともに学校体制の工夫もなされている。また,教科の学習を通して「自己学習力」の育成を図っているが,この能力を高めることによって総合学習がより良いものになっている。

T.心の教育の一環としての総合学習

 「生きる意味と目的の喪失」と「人間関係能力の低下」という2つの心の問題を解決するための総合学習の在り方を求める。1つめの「生きる意味と目的の喪失」という心の問題を解決するために,地球市民的資質の育成を目的とした総合学習を「総合学習A」,2つめの人間関係能力の育成を目的とした総合学習を「総合学習B」とした。

○総合学習の全体像

U.総合学習A 

生きる意味と目的を持たせること・地球市民的資質の育成

生徒が「自分は社会から必要とされている」「自分と世界はつながっており自分のやっていることは世界に何らかの影響を与えたり貢献したりしている」という意識や自分の存在感を持つことによって生きる意味と目的を見いださせたい。そのためには自分と世界がいろいろな面で結びついていることに気づき,世界で起こっている様々な問題を自分とのつながりの中で考えようとする態度や意欲が必要である。世界と自分とのつながりを意識し地球的な視野で物事を見つめ考えることは「地球市民的資質」である。地球市民的資質の育成を目指す学習を通して生徒一人ひとりに自分の生きる意味と目的を考えさせる。この学習で取り上げる地球的規模の問題を下表に示す。中学校の3年間でこれら5つの問題を取り上げた5講座を設定し地球市民的資質の育成を目指す学習の在り方を求める。

V.総合学習B

 人間関係能力の育成

今の子どもたちの現状を見ると,気心の知れた少数の仲間同士のつきあいがほとんどであり,よりひろい人間関係を求めていこうという意欲はあまり感じられない。さらにこれらの少人数の集団内での人間関係のトラブルさえも十分に解決できない場合が多い。これらの現状から人間関係能力の育成のためには様々な集団内で人間関係に関する多くのことに直面させる必要があると考えた。一つの方法として学年の枠をはずした集団の中で様々な活動をしていく中で,意見の対立,討論,妥協点の検討,自己主張,自己抑制,人間関係の復旧等体験させていくことが考えられる。学校行事の活動も効果的に活用し様々な性格の集団を作り意図的に活動させる等,人間関係に関わる多くの場を設定して人間関係能力に育成に必要な体験を重ねていく。

「人間関係能力の育成」を目指す学習はその性質上,長期間にわたる活動が必要である。そのため活動の期間を数週間〜数ヶ月にわたって設定し,実践と評価を繰り返し,3年間を見通したよりよい学習の在り方を求めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

<年間活動計画と教授組織>