佐賀大学文化教育学部附属中学校の実践事例
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総合的な学習を表すタイトル
クロスカリキュラム,総合学習
キーワード
クロスカリキュラム,総合学習,体験活動
総合的な学習に対する考え方
教科の学習で得た学力の補充・深化・統合をめざす場の設定,社会の変化に主体的に対応できるための学習の内容や方法を取り入れる必要がある。道徳・特別活動において,これまで以上に社会の一員としてのあり方や生き方,国際社会に生きる人間としての態度や能力を育成する必要がある。
総合的な学習の目標
必修教科でのクロスカリキュラムの導入により,「社会の変化に主体的に対応したたくましく生きる生徒の育成」を,選択教科での教科枠を外した総合学習により「21世紀を主体的に生きる力と生涯学習の基礎を培う」ことを,道徳・特別活動での体験活動を重視し,両者を関連づけたスパイラル化した指導により,「共に生きる力を追求する生徒の育成」を目指す。また,それら3つの関連性を検討し,学校の教育活動全体の体系化を図る。
総合的な学習の実践形態
1 クロスカリキュラム(主として学び方)
・「環境」「国際理解」をテーマに教科間の関連を横断的・総合的な学習
・学校5日制に伴う教育内容にスリム化を意図した横断的・総合的な学習
2 スパイラル化した指導(主として生き方)
道徳学習と体験との合体活動の重視,関連づけた指導
・「校外学習・修学旅行」「国際理解教育」「職場訪問学習」「合唱コンクール」など
3 郷土学習科(学び方と生き方の総合)
・教科の枠を超えた「郷土学習科」における学際的な支援体制による総合学習
・「郷土学習科」と有機的な関連を図るための2年生選択学習及び3年生後期選択学習のあり方
4 生徒の情報活用能力の系統的な向上を目指した指導
・コンピューターリテラシーの育成
・コンピューターネットワークの活用
推進組織
必修教科部会,選択教科部会,教科外部会,情報教育部会の4つの部会での研究実践
3人教科−必修教科部会2名,選択教科部会1名に所属する。
2人教科−必修教科部会1名,選択教科部会1名に所属する。
1人教科−必修教科部会と選択教科部会の両方に所属する。
教科外部会には,道徳部会,特別活動部会の部会長,各学年の代表(6名)及び行事部,進路指導主事,生徒会担当の計9名で構成する。
情報教育部会には,各学年より2名ずつ所属する。
文献
佐賀大学文化教育学部附属中学校研究紀要第21号(1998)
コメント(実践から参考になること)
「21世紀の生活者像」に迫るために,必修教科,選択教科,教科外,情報教育のそれぞれではぐくみたい資質・能力を明らかにし,総合的な内容を検討している。また,キーワードとして,1年生は「気づく」,2年生は「深める」,3年生は「関わる」を設定し,内容の系統を図っている。さらには,各部会の内容面・方法面からの関連も図ることで一層の内容の深 まりを目指している。

T.クロスカリキュラム(これまでの実践例より抜粋)

A 環境学習−水を考えよう− 複合型 全43時間 第2学年
  理科・・・・ 事件などによって科学的方法を考える
  社会科・・・ ディベートで解決策を吟味してそれを提案
  国語科・・・ 水環境をテーマにして新聞制作,学外に発信する
  英語科・・・ 河川清掃に関する英文を読んで得た考えを英語で表現する
B 国際理解−文化理解− 複合型 全29時間 第2学年
  特別活動・・ 講演「インドの人々」
  国語科・・・ 「平家物語」
  社会科・・・ 「日本と国際社会」
  音楽科・・・ 「日本の音楽に親しもう」
  英語科・・・ 「アジア」
  道徳・・・・ 「国際化とは」
C 環境学習 身近な環境問題に気づこう  複合型 全57時間 第1学年
  国語科・・・ 「自然の中で」15時間
  理科・・・・ 「身のまわりの物質と水溶液」10時間
  音楽科・・・ 「自然と音楽」8時間
  美術科・・・ 「自然を見つめよう〜サウンドスケープ〜」10時間
  技術・家庭科 「家庭生活と環境」5時間
  英語科・・・  Unit7由美たちの冒険「外国人に佐賀のゴミ分別法を教えよう」6時間
D 環境学習−地球環境問題−  複合型 全22時間
  英語科・・・ 「地球規模の環境問題の認識」
  理科・・・・ 「地球の自然環境」
  社会科・・・ 「公害と環境の問題」

「環境学習−地球環境問題−」の実践例

1.学習指導計画
関連教科

指 導 目 標

学習内容や学習活動

1 地球環境問題への関心・態度と環境を保全する意識を育てる。
2 情報をもとに分析力,判断力,多面的思考を育てる。
3 学習したことを表現を工夫しながら提言させる。
1 公害と環境の問題を学習する。
2 環境問題を解決するための対策を政治・経済など多角的に考える。
3 提言発表会および保全のためのディスカッション。

1 自然界の均衡について理解させる。
2 生命尊重に裏付けられた環境保全の意識を高める。
1 地球誕生から現在までの中で人類の誕生と発展を知る。
2 環境問題の事象を実験で再認識する。

1 地球規模の環境問題についての基礎的知識を身につけさせる。
2 インターネットを活用した情報
探索を行い,地球環境問題の現
状と原因を把握させる。
3 環境保全の提言を討論やMailinglist を通して発信させる。
4 環境保全のため世界各地の活動を知り自分自身でできることを
考えさせ,行動する意欲をもた
せる。

1 現状把握のための題材
1 Can Anyone Hear Me?
2 The secret of the earth
3 Oue Home Planet
4 What is Our Future?
2 調査活動およびディスカッション。インターネットによる情報探索活動。
3 レポート作成 ディスカッション
4 世界に向けて提言を発信する
2.学習の流れ
3.学習指導の実際

教科間での指導目標や指導内容の重なりが多い。特に調査活動や討論,提言の発表といった体験活動に重なりが多い。したがって,そのような重なり部分をTTや一つの教科で取り扱うと重複していた部分から時間が生み出されることになり,また重複部分を生徒が多面的に学習することになる。今回の場合は3教科の予定時間の合計が22時間であったものが,教科をクロスしたために16時間に短縮された。つまり6時間が短縮された。

調査,討論,提言の内容は教科単独ではできなかったであろう内容まで深めることができた。最終提言は文集「Save the earth」にまとめ,さらにインターネットで発信することになった。

4.クロスカリキュラムによる授業の生徒の評価(○)と教師の評価(☆)
社会と理科と少し切り離せない部分があって,その部分を2つの分野から見ることにより多方面から見ることができたと思う。社会的原因と科学的原因というのは環境問題とは関連がある。経済的成長をとげるとやはり科学も成長する。そのように考えると,社会と理科をつなげることは結果的に詳しくなってよかったとわたしは思います。(H子)
とてもおもしろかった。原因は特に理科的な考え方から考え,対策は今まで社会で学んできたことをどっちも使ったような感じでレポートを書くことができたからだ。時間も短縮できてとてもよかった。(K子)
理科と社会の共同作業を土台とした環境プロジェクトは,環境問題に関するレディネスや知識が生徒に備わっているので,用語の調査活動などを効率的に進めるうえで有効であった。
政治・経済的な視点が得られたので,理科的なアプローチだけでは到達できなかったであろうところまで学習することができた。

U.スパイラル化した指導

1.研究の力点
1.スパイラル化した指導の理論と実践の研究
@道徳・学級活動の一体化についての実践と理論を研究する。
A体験活動を厳選し,学年別の系統性について研究する。
B体験活動と道徳の資料の素材との関連を考慮した道徳の資料を開発する。
2.「個を生かす集団づくり」の理念に基づいた学級づくりの推進
@「個を生かす集団づくり」の理念に基づいた学級づくりの実践を展開する。
Aアンケート項目の作成とアンケート結果の生かし方
2.研究の計画(平成10年度)

研    究    内    容

修学旅行,校外学習(全校 スパイラル1)
学級づくりアンケート(1学期) 17日までに実施。
国際理解事前アンケート(全校 スパイラル2−1)

国際理解イントロダクション(全校 スパイラル2−2)
国際理解教育の具体的な進め方についての提案
国際理解教育講演会(全校 スパイラル2−3)
朝の会,帰りの会の相互参観実施要領

国際交流授業の計画を立てよう(全校 スパイラル2−4)
職場訪問受け入れについて保護者,地域への協力依頼
国際交流授業の準備をしよう(全校 スパイラル2−5)
担任と留学生との打ち合わせ
職場訪問受け入れ先決定
朝の会,帰りの会の全体検討会 係活動アンケート(学級づくり)

国際交流授業(12時間目)(スパイラル2−6)
1学期の国際理解のまとめ 道徳の時間(全校 スパイラル2−7)
職場訪問についてのイントロダクション(2年 スパイラル3−1)
「働く喜び」について対話しよう(2年 スパイラル3−2)
職場訪問についてのグルーピング(2年 スパイラル3−3)
職場訪問を充実させるために話合いをしよう(2年 スパイラル3−4)

職場訪問活動(2時間目から活動開始)(2年 スパイラル3−5)
職場訪問報告書作成(2年 スパイラル3−6)
10 職場訪問発表会(2年 スパイラル3−7)保護者とのTT
合唱コンクールのイントロダクション(全校 スパイラル4−1)
11 合唱コンクールの計画を立てよう(全校 スパイラル4−2)
合唱コンクールを充実させるための話合いをしよう(諸問題の解決等) (全校 スパイラル4−3)
合唱コンクール(午後)(全校 スパイラル4−4)
合唱コンクールのまとめ(全校 スパイラル4−5)
12 学級づくりの実践事例報告会(係活動や人間関係づくりについて)

スパイラル化した指導の実践事例報告会

学級づくりについてのアンケートの集約      ※    は核となる体験活動

V.郷土学習科

本校の総合学習「郷土学習科」では,生徒の活動を単なる調査活動に終わらせず,地域社会に おける体験活動を取り入れ,観察・実験,訪問,発表や討論,創造的表現活動・製作活動など体 験的学習や課題解決的な学習を積極的に展開させる。また,学習内容を共有化する手だてによっ て「郷土学習科」としての総合化を図る。さらに生徒一人ひとりの探究活動の過程においては知 識や技能などが生徒の中で関連付けられ総合化される。

○総合学習「郷土学習科」の指導目標
@身近な生活の中に自ら学習課題を見つけ,解決の方法を工夫して課題解決ができるようにする。
A課題解決にあたっては,体験的学習や創造的表現活動,製作活動などを取り入れて,生徒の興味・関心を高め,成就感や満足感を味わわせるようにする。
B学習の成果を発表し合うことにより,個々の視野を広げたり,思考を深めたりする。
D学習したことを現在の生活と結び付けてとらえさせ,自己との関わりについて気付かせ,進んで生活の向上に取り組むようにさせる。
E身近な郷土についての学習を通して,自己と地域との結びつきや生活の中で果している地域の役割についての理解を深めさせ,発信や提言を通して地域社会に自分の学習成果を還元していこうとする態度を養う。
○コース一覧(平成9年度)
   

 

小 コ ー ス

大コース







A 佐賀のことばと文化 文化1
(芸 術)
B 佐賀の伝統文化と芸能文化
C 佐賀の食文化と被服文化 文化2
(くらし)
D 佐賀の歴史やくらしと文化
E 佐賀の自然 自 然
F 佐賀の環境問題
G 佐賀の福祉・ボランティア 人 々
H 佐賀の国際化
  I 佐賀の未来像
○総合学習「郷土学習科」の活動の実際(35時間)
● 4/10 郷土学習科ガイダンス(1時間) 
● 4/17 郷土学習科講義(2時間)
● 5/15 カウンセリング(2時間)
● 5/22 ローテーション式アドバイス(2時間)→小コース・大コース・コースT決定
● 5/29 年間指導計画作成(1時間) 
● 5/29~7/3 テーマ探究活動(8時間)
● 7/10 コース別中間発表会(1時間)
● 7/10~7/17 テーマ探究活動(3時間)
● 7/17 夏休みの学習計画(1時間) 
● 9/11~9/25 テーマ探究活動(6時間)
● 10/2 小コース別発表会(2時間)
● 10/9 全体発表会(2時間) 
● 10/14 楠のかほり原稿執筆(2時間)
● 10/16 大コース別意見交換会(1時間)
● 10/18 アンケート・まとめ(1時間)

Eコース「佐賀の自然」の活動より

Eコースの特色

佐賀の代表的な生物や事象をテーマとして選択し,それを詳しく文献で調べたり現地調査を行ったりする。さらに,実験・観察を通して,テーマから生じた疑問点の解決を図っていく。分かったことなどをホームページに掲載し提言する。

活動の実際

現状把握

 

実験・観察・作成

     

提 言

1文献調査   ・ムツゴロウ飼育装置作製  

  ・有明海の自然を守ろう
2現地調査,有明海,諫早湾 ・ムツゴロウの捕獲の仕方の体験,道具の調査
3その他
有明水産振興センター,佐賀県庁,役場等
  ・ワラスボの解剖,骨格標本の作製     ・ムツゴロウを増加させ
よう

W.生徒の情報活用能力の系統的な向上を目指した指導

1.研究の力点
生徒のコンピュータリテラシーの育成
コンピュータネットワークの活用
職員研修
2.情報教育の指導計画

学 年

回 数

内                容

1年生

第1回
第2回
第3回
第4回

ワープロを使ってみよう  パソコンの起動・終了・データ保存
ワープロで日記を付けよう  ワープロで詩を作ろう
表計算とグラフィックソフトを体験
情報受信・発信の準備と簡単なインターネット体験
ネチケットと受信発信の方法およびWWW

 

2年生

第5回
第6回

第7回
第8回
第9回
第10回

クラス間でe-mailのやりとり1
クラス間でe-mailのやりとり2
HTML基本講座・ネチケットの実践
学級紹介を情報発信(HTML1) 項目と役割分担
学級紹介を情報発信(HTML2) 中身の検討とデータ打ち込み
学級紹介を情報発信(HTML3) 作成
今までのまとめ

3年生

  各教科の中で学んだことが生きる
プレゼンテーション・Webページ作成など