鉛筆による<構想表現>


◆実施学年:高校1・2年

◆実施時期:1995年度1学期

◆教材とモチーフ

教材はB5の画用紙と鉛筆,モチーフは教科書と身近にあるもの(文房具や時計など)である。 テーマは構想画として設定し、制作の条件はつぎの2点である。教科書に載っている作品(写真)と身近な物を自由な発想で画面の一部に取り入れ、 多様に形態と組み合わせ構成する。

◆題材のねらい

日常的,観念的な物の見方を捨て、二つ以上の形を自由な発想で構成することにより、形と形の不思議な出会いや異次元への空想など、自らのイメージを広げるトレーニングとしてとらえる。
短時間で制作する教材なので、アイデアスケッチやエスキースなどはしないで、いきなりモチーフから思い付いた形を組み合わせながら描いていく。このことにより、制作の過程の中で「イメージという細胞」が増殖するように様々な発想が膨ら らみ工夫が生まれることを期待する。画面構成や調子・明暗の組立について検討させながら構図を常に意識させる。

◆作品の制作

教科書にある構想画やシュールレアリスムなどの作品を鑑賞し関心と興味をもたせる。 モチーフと画面に取り入れる教科書の作品を決める。
最初に全体的な構成を決定するのではなく、興味ある形から積極的に描いていく。描いていく途中で、徐々に他の形を組み合わせながら全体の構図を意識していく。形と形の思わぬ出会いや予期せぬ展開を大切にする。 形は画面の中でできるだけ大きく大胆に扱うようにする。
画面全体の明暗の組立を工夫しながら描き込む。
鉛筆の使い方(タッチや調子など)を工夫する。

◆まとめ

1.生徒作品について
この題材の捉え方そのものがひとり一人異なっており、また、興味を示した形や構想に色々な工夫がある。例えば、教科書と時計を静物画のように扱った作品や模写の絵の中に時計などの形態を取り込んで構成するような作品、あるいは、様々な物の断片的な形をイメージ構成した作品もあり、多様で個性的なイメージの広がりを感じる。

2.指導上の留意点と課題
生徒実態は様々である。テーマに対して機敏に反応し、興味を持って意欲的に取り組む生徒もいれば、何をどの様にしてよいのか分からず戸惑い、制作の進まない生徒もいる。あるいは、静物画や人物画のように与えられたモチーフを再現描写することは得意でも、構想表現は苦手で、絵をつくるという意識の希薄な生徒もいる。
したがって、制作に入る前のテーマ思考の与え方が大きな問題となる。それには、スライドや教科書・生徒作品などの参考作品を多く提示することも一つの方法である。テーマの具体化のための多くの手法に触れさせ、日常的な観念世界から自己を解き放ち、心の赴くままに自由に画面を作る楽しさを理解させる。しかし、いくら自由だと言っても絵としての造形要素を抜きに制作できない。形の取捨選択・遠近・大小・位置などの要素は常に意識させる必要がある。 参考作品の提示で注意すべきことは、その傾向が同一のものに偏らないようにすることである。参考作品の影響は大きく、その類似的な作品が出現し易いのである。


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