2.プロジェクトの現状分析
1)プロジェクトへの参加理由あるいは参加目的
1996年2月に行った調査では、40校中21校から、プロジェクトの位置づけ
としては、次のような回答が得られている。
クラブ活動・部活動として 12校
理科の授業の中で 4校
学科の活動として 3校
インターネットへの取り組みとして 6校
希望者 1校
注)1つの学校が2つ以上の位置づけをしているものがあります。
今回の調査結果を各学校毎に示すと次のようになっている。環境教育の教材とインターネットの利用
インターネットの利用による環境問題へのアプローチ
化学クラブの活動の一環として
化学班の活動とパソコン通信の利用
遠隔共同学習の実験
酸性雨に関する科学クラブの活動として
地域の環境に関する科学クラブの活動として
酸性雨に関する生物クラブの活動として
科学研究部の活動として
酸性雨に関する理科クラブの活動として
理科の学習の教材として
エコロジー部の活動の一環として
理科部の活動のテーマに取り上げたかった
科学クラブの取り組みの一環として
環境教育の教材として 第3学年2分野で利用
理科課題学習のテーマとして。中学2年選択
大学とのプロジェクトとの関連において
環境教育の教材として
科学クラブの活動とインターネットの活用研究
大気汚染についての教材として
インターネットの利用と酸性雨に関する興味2)プロジェクトの教育活動への位置づけ
ネットワークを学校の教育活動の中に取り入れていく場合、特別活動の領域がネット
ワークの特性を生かす上でも一番易しい。初年度の調査結果と比較してみると、今回の
調査では、理科の授業など教科の領域での利用が、具体的な形で把握できるようになっ
てきた。データの蓄積が進み少しずつではあるが、データベースを利用した活動が出来
るようになってきたものと考えられる。中学校理科の教諭の学級の放課後の活動
総合学習「身近な環境と私たち」調査活動
化学クラブ。文化祭で発表
環境教育・選択理科の取り組みの1つとして。
環境教育の講話。中学3年の選択理科(イオンの単元)
科学部の活動の1つとして
生物部の活動の1つとして
環境教育・理科教育のなかで
中学3年理科教育における環境教育
化学1Aにおける環境保全の教材
総合学習「水と緑のたんさくたい」。webの利用
理科の授業への利用。部活動として文化祭で利用
エコロジー部の業務として
部活動における環境教育
化学の授業での利用
中学校第3学年第2分野「地球と人間」 選択理科
中学校第2学年課題学習のテーマの1つとして
理科教育「地球と人間」の教材として
中学校3年生2分野の教材として
環境教育とインターネットの利用
選択理科・理科教育の中で
中学校3年選択理科での調査活動。インターネットの利用
課題研究のテーマ。工業教育の活性化
3年生の「人間と自然」
有志生徒による授業外の活動
環境教育。文化祭での発表
課題研究
小学校6年生の授業の中での調査活動3)このプロジェクトに参加してよかったこと
@初年度の調査結果では、次のような回答が多かった。
・他の学校との比較が出来ることがよい。
・環境問題を考える意味で、大きな教育効果がある。
・生徒が自主的に運営できることで、教育的に意味がある。
A今回の調査による回答。
・継続観測の体験。観測結果の公開による励み。生徒と教師が共通の目的で活動 出来たこと。
・酸性雨の実態の把握。メールの利用。酸性雨が身近にとらえられた。
・酸性雨に興味を持ったこと。インターネット活用への興味の増加
・自主的な研究活動が全国との関わりの中で拡がった
・選択理科で意欲的な活動が出来た。環境教育に役立った
・全国のデータとの比較が可能。他校との交流
・1年間を通した継続的なクラブ活動が出来た
・身の回りのデータの測定。全国のデータとの比較。
・身近な環境への関心の高まり。
・酸性雨の実態の把握。インターネットに関する理解
・共同学習の推進。全国のデータとの比較による広い視野での環境教育の推進。
・地域の酸性度の測定が出来た。
・環境汚染に対する関心が高まった。コンピューターの利用が進んだ。自主的な
観測が出来た。
・酸性雨や公害に対する理解が深まったる
・科学クラブの活動の活性化。酸性雨に対する理解の深まり
・同世代の仲間との協力。メールでの意見交換
・生徒の主体的な調査。自校のデータと全国のデータを結びつけ酸性雨に関する
関心が高まった。
・他校のデータを収集できる
・各地のデータの収集。生徒の興味関心の高まり。
・データの送信や受信を通してインターネットの利点が理解出来た。プロジェク
トを担当していることの認識
・環境教育の推進。クラブ活動の参加者の増加。課題研究への取り入れ。イン
ネットワークによる繋がりに期待
・測定に対すて積極性がでた。生徒が積極的になった。
・酸性雨に対して理解が深まった。インターネットの利用について学ぶことが
出来た。
・酸性雨の状況を身近にとらえられた。全国のデータを身近にとらえられた。
4)このプロジェクトを行うに当たっての運用上の諸問題について。
@初年度の調査において、データの送信や観測上のトラブルについて、次のような回答
が寄せられている。
データの送信は誰が行っているか。
生徒 9校
教師 13校
まだ行っていない 1校
観測上のトラブル
・レインゴーランドの設置場所・転倒対策 9校
・レインゴーランドの故障 2校
・pHメーターの故障 1校
メーリングリストの利用について
・大変役にたった。 9校
・生徒にとって分かりやすい表現が必要 1校
・今後も継続してほしい 1校
・生徒の意見交換のためのメーリングリストがほしい。 1校
・学校の設備が十分でなく使いにくかった。利用環境の
充実が必要 2校
・活用までいたっていない。 1校
A「プロジェクト推進にあたって困難であったこと」についての回答
・降雪期の観測が困難。他の活動と重なり、時間的に苦しかった。
・観測機器の破損。
・生徒に責任を持って観測させるのが難しい。
・装置が凍り付いた。長期休暇中の測定が出来ない。
・担当教師が変わると継続が困難。データの取りまとめには時間が必要。
・部員が少ないと継続調査が困難。教師の転勤は調査の中断につながる。データ
送信に教師の負担が大きい
・雨が降らなかった。部員が少ない。送信手続きに慣れるのに時間がかかった。
回線の混雑。
・観測装置が風に飛ばされた。雨が定期的に降らない。
・教師の転勤で理科クラブがなくなった。
・観測機器の破損。(かなりの学校で破損)
・測定値にばらつきがでて信頼性に疑問。測定の継続による疲れがでた。
・熱心な生徒の卒業後後が続かなかった。
・生徒の活動に時間的な制約がある。生徒が積極的でない。教師の負担が大きい
・生徒任せになった。コンピューターの不調。
・降雨毎の測定が生徒には困難。機器の破損。
・生徒が継続的に測定する事が困難。
・観測が定期的に出来ない。
・生徒の活動時間がとれない。
・データの送信が遅れた。
・観測機器の破損。風に飛ばされた。
・長期休暇中は、教師が測定した。
・生徒の自主活動として設定したため、活動の継続性に苦労している。
・すべて教師が行ったので大変だった。
・気象データの入手に手間がかかった。長期休暇中の観測は困難。
・子供に時間的なゆとりがない。3年を経過した今回の調査では、継続的な活動が要求されるプロジェクトの実施が、
学校においてかなり負担になっていることがわかる。データの送信や、観測の業務が
教師の負担増につながっていることも問題である。ネットワークを利用した共同学習
は、それぞれの学校の事情をこえた、共通的な活動がさけられないことを考えると、
今後どのようにすれば、各学校の負担を軽くすることが出来るか、プロジェクトの内
容も含めた検討が必要である。5)「バツクアップ体制について。データはどこがまとめるか」の回答
・参加校それぞれが行えばよい。 13校
・分析を事務局でするのは不可能。
・意欲を高めるため、基本的なものは事務局でする必要あり
・グラフ化出来ない学校もあるので、グラフ化まではしてほしい。
・いろいろな学校が参加しているので、集約の作業が学校で出来るとは限らない。
・参加校の中でする作業であれば、組織作りが必要。
・各校でまとめるためにも、統一したものが必要。
・データの登録時にグラフ化出来るとよい。
・データの送信までが活動の中心だったのは残念。
・事務局でグラフ化してほしい。
・同時期に降る雨について、集約があればよかった。
・参加校。ダウンロードに時間がかかる。
・全体的なまとめを、ホームページにのせてほしいる
・全国規模のデータの集約は事務局でお願いしたい。
・参加校。自動的にグラフ化出来ないか。
・地区毎のデータのグラフ化をしてほしい。6)事務局への要望事項など
・中学生には難しかった
・事務局などとの交流を増やしたい。
・酸性雨関連のリンクを増やしてほしい。。
・登録したデータの修正が出来るようにしてほしい。
・登録したデータの並べ替えが出来るようにしてほしい。
・参加校が少ないので、増やしてほしい。
・観測機器の修理費用の補助がほしい。
・測定器の誤差についての質問をしたい。7)酸性雨データの教育活動への利用について
・文化祭での発表等に利用
・中学校の選択理科の教材として利用
・科学部の活動で利用。
・高等学校の理科の教材にグラフ化して利用。
・小学校で酸性雨を考える資料として生徒に示した
・中学校における環境学習のデータとして利用
・下校時に放送で酸性度を放送
・中学校の夏休みの科学研究。
・統計教育で数学科と美術科で利用。
・中学校の理科の授業の中で資料として
・高等学校における農業クラブの研究活動の資料として
(付記)データの利用にまでいたっていない学校が多いのが現状である。8)他の学校や組織との交流について
参加校の間での、生徒や教師の電子メールを使った交流は、今回の調査では数校
の学校で行われているにすぎない。ネットワークを使った共同学習においては、生徒
間の交流が大きな教育効果をもたらすことがわかっている。現在行われていない理由
は、ネットワークの利用環境の整備が不十分であること、電子メールを使った交流を
どのように教育活動の中に生かしていくかが、模索されている状況にあるものと考え
られる。新居浜工業高校の宇佐美先生からは、このプロジェクトの国際化をすすめる
提案もいただいており、このプロジェクトのこれからの大きな課題となるであろう。