\.プロジェクトの教育的評価と課題
1.広域ネットワークを利用した共同学習の教育的効果
今回の、酸性雨調査プロジェクトの実施をとおして、広域ネットワークを利用した共同
学習について、今後の学校教育に大きなインパクトを与えるであろう、2つの教育的意 味を見いだすことが出来た。
(1)学校の校種だけでなく、学校の中における様々な集団、あるいは個人を包括した 多様なグループによる共同学習が可能になったこと。
今回のプロジェクトは、小学校・中学校・高等学校・工業高等学校・商業高等学校 ろう学校・園芸高等学校等、多数の校種にまたがった企画としてスタートした。し
かもグループの多様性は、それぞれの学校の中においても見ることができ、例えば
取り組みの形態として一番多いクラブ活動についても、地学部・生物部・科学部・
コンピューター部・化学部など様々なクラブが参加している。現状では先生だけが
取り組んでおられるケース、授業の中で位置づけがなされているケースなど、共同
学習の基盤となるグループの多様性はきわめて大きい。
このような学習は、ネットワークの利用なくしてはけっして実現しなかったもの
である。もちろんこのような共同学習体制が実現したのは、スタートにあたって参
加グループについて条件をつけなかったこと、申し込みを全部受け入れたことも関
係している。インターネットという開かれたシステムの中においては、今までにな
い自由な雰囲気の中での教育活動が可能になる。学習が開放的な雰囲気のもとにす
すめられ、子供たちにとって楽しいものになると考えられる。(2)共同学習の目的は、実施している学校によって自由に設定することが可能になっ
たこと。プロジェクト参加校として、必要な作業を実行しておれば、そのほかのこ
とは、参加校の自由裁量ですすめることが可能になったこと。
今回のプロジェクトについての、参加校に対する調査を行って驚いたことがある。
それは、参加しておられる学校によって、学習の目的が実に広い範囲に拡がって
いたことである。環境学習を、酸性雨の調査をとおして全国的にやってみよう、継
続的な観測でデータを蓄積しようということで始めたプロジェクトであるが、3年
を経過した今、このプロジェクトは共通の目的以上に、参加校それぞれの教育目的
が参加校にとって重要だったのではないかと考えるに至っている。
このような教育活動の設計は、いままでの学校教育には見られなかったものであ
り、広域ネットワークの充実によって、学校教育の個性化などに大きく寄与するも
のと考えられる。