展覧会パンフレットより |
『ガーベラ』1957頃 |
『川向うの家』1962 |
『まつりの日』1963 |
『宇宙距離』1985 |
『空間構造』1988-89 |
『愛神エロスの溜息』1991 |
高橋 秀(1930年生まれ)が突然のようにイタリアに渡ったのは1963年のことでした。
それは安井賞を受賞してからの疾風怒涛のような2年間への回答だったのです。あるいは、あくまでも過去の実績
を評価しようとする美術界に対して、自らの新しい表現を探ろうとする画家のとった自己
防衛の手段でもあったのです。そうしなければ、現在の「抽象としてのエロス」あるい
は「赤と無の極限」の両家高橘秀は生まれていなかったでしょう。
高橋秀がイタリアに渡って制作に没頭し、イタリアでも確実に評価を得ることが
できた背景には、常に日本国内の、とくに郷土(広島県新市町、福山市周辺)
のコレクターたちの支援がありました。コレクターたちは、ローマのアトリ
工を訪ねたり、年賀状のやり取りをしたり、個展のレセプションで言葉をか
わしたり、自宅で作品を毎日ながめながら、画家高橋秀と深く交じりあっ
ていたのです。この支えによって画家は存分に自分の道を求め、一歩でも
本物に近づこうという努力を重ねていったのです。画家の作品は実はコレ
クターとの合作だったのです。
このたびの展覧会「高橋秀:画家とコレクター瀬戸内収蔵作品より」は、
高橋秀の回顧的な展覧会であると同時に、画家と瀬戸内海沿岸のコレクター
たちとの交流を綴った物語でもあります。作品は1950年代から現在にいたる約
120点が展示されます。