イエスの時代(部分) | マルケ地方の小さな絵 | 海の夢 | 無題 | 無題 |
エンツオ・クッキはイタリアを代表する世界的な画家のひとりです。 感情的な表現が極力抑えられ、鮮やかな色彩もすっかり消え失せていた1970年代後半、クッキは制作 活動を本格的にはじめました。状況を反映させて観念的で神経質な線や理知的で抑制された色彩を使 うのではなく、クッキはあくまでも心の機微を伝える線や情感を豊かに表わす色彩によって独自世界 観を展開しようとしました。クッキの表現は世界の美術シーンでたちまち異彩を放つようになり、 1980年代初頭の国際的な展覧会につぎつぎと参加するようになっていきました。そのなかで、 クッキはサンドロ・キアやフランチェスコ・クレメンテとともに「トランスアヴァングァルディア」とか 「新表現主義」などと呼称されたのです。 クッキの作品は一見すると刹那的な感情の起伏を表わしているように思われがちですが、 実は私たちの日常的な感覚では知覚することのできない世界を開示しようとしているのです。 クッキは兄術者のような想像力によって、私たちに見えない世界を喚起するような予言的な 図像を作り出し、原初的で神話的な世界を描きだします。クッキは現代における稀有の予 言者的な芸術家とも言えるかもしれません。クッキの最近の主な個展としては、ニューヨーク のグッゲンハイム美術館(1986年)、パリのポンピドウ・センター(1986年)、 プラートのルイージペッチ現代美術館(1989年)、トリノのカステッロ ディ・リッボリ(1993年)などがありますが、本展は日本で初の本格的なな回顧 展となります。本展は初期からの代表的な絵画、彫刻、素描など70点、そして 本展のための最新作12点、計82点で構成いたします。 |