葛飾北斎「琉球百景、城獄霊泉」 ベルリン東洋美術館蔵 |
シスレー「マロニエの小路」 メトロポリタン美術館蔵 |
鳥居清長「三代目沢村宗十郎の治兵衛と四代目岩井半四郎の小春」(左図) 喜多川歌麿「北国五色墨・切の娘」(右図) |
カミーユ・コロー「ヴィル・ダブレー」(左図) 久米桂一郎「林檎拾い」(右図) |
19世紀末のパリにひとりの偉人な日本人がいました。
その名は林忠正。
林忠正は、世界で最も活気のあったパリの美術界で、芸術
家や美術評論家、コレクターたちと、その流暢なフランス語を
駆使して交流し、また1900年パリ万国博覧会日本館の成功に
尽力した、東西文化を繋ぐ役割を果たした明治期の先覚者で
あります。
林忠正は富山県高岡市に生まれ、明治11年(1878)卒業間
近かの東京大学を中退し、国策貿易会社である起立工商会
社に入社してパリ万国博覧会の通訳としてフランスに渡りまし
た。後には独立して美術店を開き、印象派の画家モネやドガを
はじめ、文学者のゴンクールやゴンスらとも深く交友しました。
フランスと日本を行き来しながら美術商として、あるいは評論家
として活躍し、印象派の発展に寄与しました。
一方、日本における国粋主義的な日本画擁護運動に対抗し
て西洋画の啓蒙と発展に心を砕いて、明治美術会や黒田清
輝らの活躍を援護したり、明治33年(1900)にはパリ万国博覧会
の事務官長に就任し、日本文化を系統的に紹介した功
績によりフランス政府よりレジョン・ドヌール勲章を授与されたりし
ました。
本展は、林忠正と彼が関わった東西文化の交流を本格的
に紹介する初めての展覧会であり、発展途上にあった日本の
国際化の先駆けとなった林忠正の生涯とその意義を明らかにし
ようというものです。
■「展示内容」総数約150点
(1)欧米への日本美術の紹介とジャポニスムの版画家たち
ベルリン東洋美術館の日本、中国、朝鮮の15〜19世紀の 陶器、絵画や北斎などの浮世絵、メトロポリタン美術館の歌 麿、清長などの浮世絵、またジェームズ・ティソなどジャポニスム の版画。
(2)日本へのフランス近代絵画の紹介と日本の近代絵画の振興 への貢献
林忠正が日本にもたらしたコロー、ピサロ、シスレー、 マネ、ギヨーマン、ブータンなどのフランス近代絵画。パ リで交流のあった黒田清輝、久米桂一郎、山本芳翠や林が 後援した明治美術会の浅井忠、小山正太郎、松岡寿、原田 直次郎などの日本近代絵画。
(3)万国博覧会を中心とした諸工芸への貢献
林忠正が事務官長として関わった万国博覧会出品の横 山弥左衛門(二代)、鈴木長吉などの工芸品、および起立 工商会社関連資料。
■「記念講演会」
日時:11月2日(土)午後2時より
演題:「ベルリン東洋美術館の
日本美術コレクションについて」
講師:ヴィリバルド・ファイト博士
(ベルリン東洋美術館館長)