■ 広島大学附属福山中・高等学校の中高一貫教育 ■

3 特色のある学習

 芸術科   

(音楽)

 音楽の授業における中高一貫教育のメリットはいろいろあるが、その中で器楽(ギター)の指導のメリットについて述べてみよう。ほとんどの生徒が小学校から習っているリコーダーに比べ、ギターは上達するのに時間がかかり、生徒の習熟度の差も大きくなりがちな楽器であるため中学校では敬遠されがちであるが、本校では中学校の2・3年時にギターの基礎的奏法をじっくりと学ぶことを目的として指導を行っている。それは、中学校の基礎の上に立って、高校でそれをさらに継続、発展させることが可能なためである。
例えば高校ではギター奏法の応用として、曲に応じた様々な伴奏法やギター弾き語りを取り入れている。また、高校の授業では、本校の中学校から進学した生徒と、 高校から本校に入学した生徒とが同時にギターを学んでいくが、その際、互いに助け合い教え合う態度を大事にさせている。そのような場面で、中学校から進学した生徒達が中心となって、初心者や進度が遅れている生徒に対し、援助している姿が見うけられるのも中高一貫教育の賜物であろう。

(美術)

 当校の美術科では中高一貫教育の利点、すなわち、6年間のそれぞれの発達段階に応じた計画的・継続的な教育指導の展開を模索している。
●中学1・2年生
デッサンや風景写生、デザイン、彫刻などで、ものの見方や捉え方を体験したり、「造形遊び」の要素も取り入れた形式にとらわれない創作など、造形的な基礎基本を表現活動を通して学ぶ。

●中学3年・高校1年
生徒の主体的で造形的な創造活動の能力を伸長することを主眼に、多様な素材と表現を複合的にあつかう活動を工夫している。その試みとしてコンピュータグラフィックスを活用した授業や様々な材料を取り入れたコラージュによる作品制作、美術史にふれながら異文化や国際理解を深める鑑賞学習などの授業展開を 行っている。

●高校2・3年生
それをさらに発展させて自分らしい個性的な表現を追求し多様な試行錯誤を通して自己実現していくこと、生涯にわたって美術文化を愛好する心情を育てることなどを主な目標として創作活動に取り組んでいる。

●美術科のホームページ

(書道)

 漢字および仮名という文字は、伝達の道具でもあるとともに、書道という芸術文化を担っている。簡単にいうと、前者が書写で教える内容であり、後者が書道で教える内容である。この、中学校での国語科書写から高等学校での芸術科書道への移行ということが、書写・書道教育の最も大きな課題のひとつであるといえよう。
中学校では、発達段階も考えて、ある一定の規範を示して、それを覚えるというような授業展開をしている。つまり、筆順もふくめて、全体が読みやすさにおいても美しさにおいても同じレベルに立つことなしに、文字が伝達手段として成立するのはむずかしいといえる。高等学校においては、芸術としての文字の多様な展開を観ていく。そして、文字を素材として何をどのように表現できるかを考えている。
以上のように、書写と書道では、相当な方向性の違いが見られるが、これを中高一貫教育として考えた場合、大きな視点で計画を練ることができる。細かい部分での整合性は考えていく必要があるが、書写教育をいかに充実させて、その後の書道教育を展開させるかという大きな転換をかなりスムーズにおこなえると考える。


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