広島大学附属福山中・高等学校英語科に実習に来るみなさんへ
1. 実習にのぞむ心構え
本校での実習では、授業観察、授業実習、反省会等を通じて、授業を成立させる力をつけてもらいたいと考えています。
Cでは英語科の教案のサンプルを紹介しますが、英語の授業を考えるために、以下について注意した上で参考にして下さい。
1)授業を考えるときには、対象となる生徒の学習レベル、既習事項、発達段階等を考慮
して、「単元の目標」「本時の目標」をはっきりと定めること。
2)各活動の目的を明確にし、それぞれを統合するような授業の流れをつくる
授業には復習→導入→展開→練習→まとめという流れをつくるのが一般的ですが、その授業、あるいは単元の目標をどう定めるかによって、同じ教材を扱っても全く違う授業になることもあります。「なぜその復習をそのように行うのか」「なぜここで単語の発音練習をするのか」「なぜこの発問なのか、別の場所で問うたようがよいのではないか」、等、しっかりと考える必要があります。
ただ何となく発音練習から始まる授業をやってもいいでしょうか。復習から始まるのは理由があるはずです。また、前時の練習が十分で、さらに本時の授業とあまり関係がない、と判断すれば前時の復習は省略して新出事項の導入から始まるまることも当然あるでしょう。
英語の input
をどのように増やすか、生徒にどのように英語を使わせるのか、ということも授業の流れの中で活動を考える時に大切な視点です。
3)生徒への指示をはっきりとする。
4)生徒は今何をすべきときなのか、授業のあらゆる場面について把握しておく。
5)生徒の活動や学習成果をどのように評価するのかを考えておく。
英語の授業を考え、実際に授業を行う時には、授業者が3)〜5)についてよく分かっていないと効果的な
management
はできません。もちろん予想を超えた生徒の反応によって授業者の意図通りに進まないことは当然あります。ただし、それはこちらの思う以上に生徒が学習した時だけであってほしいものです。教える側の配慮が不足した結果、であっては残念なことです。評価というのは点数をつけることだけではありません。ほめたり、励ましたり、たしなめたり、というのも大切なことです。
評価に関しては、生徒の英語に含まれる誤りをどのように評価するかも大切なことです。
accuracy を求める活動なのか、fluency
を求める活動なのか、既出の文法事項なのか、本時のtarget
なのか、未出のことなのか、様々な要素を考慮してどのように評価するかが
決まってきます。
6)授業とは生徒とのキャッチボールである。
最後になりましたが、どれだけいい教案を書いても、目の前の生徒が見えていなければいい授業にはなりません。自分らしさを取り入れた授業を展開するとき、生徒はあなたの思うとおりには反応できないことがあるかもしれません。また、流れを「完璧」にしたと思っても、それについてこれない生徒もいるものです。授業の中で、生徒のペースで学習させてそれをゆっくり見て回る、そんな活動の中で、生徒が見えてくるでしょう。
2. 実習前の準備
教科書は購入後一通り読んでみて、自分が担当する学年が、1年間かけてどのような教科書をどのように学習するかを想像してみて下さい。例えば新出事項の説明も、既習事項を利用することはもちろん、次にどのように提示されているかがわかれば、その時点でどこまで説明したらよいかが分かってきます。
実習のための教材研究では、自分が日頃使い慣れている英英辞典や参考書(Practical
English Usage, Practical English Grammar, English Grammar in Use
等)をつかうといいでしょう。
また、教師には情報(言語及び文化情報)発信者としての大切な役割もあります。non-native
speaker
として常に英語力の向上を心がけましょう。また、生徒の前で発音する前に、鏡を見ながら発音練習をしてみるのもよいかもしれません。
3. 実習生の書いた教案例
指導案 1 (中学2年生対象)
T 指導者 97年度前期教育実習生
U 教材 Everyday English 2 : Lesson 4 "Emi in London" Part A
V 本字のねらい 本文の内容理解と受動態の定着
W Teaching Procedure
A: Warm up
(1) Greeting
Letter について簡単なやりとり
よく手紙を書くか、誰に書くか、など
(2) Review Page33 Let's warm up!
1 tape listening
2 Question: Will you write back? はどういう意味だったか
3 Pronunciation of the new words
4 Chorus reading
B: Introduction
・口頭で割り箸を見せながら、 Chopsticks are used in Japan.
板書1 Chopsticks are used in Japan.
Q: 意味を尋ねる。
説明 「使われる」は be 動詞と used を使います。
現在形 |
過去形 |
過去分詞 |
use |
used |
used |
・発音練習 use - used - used
・例文の発音(2回)
板書2 Disney is loved all over the world.
・発音練習 love - loved - loved
・例文の発音(2回)
C: Practice
1)板書3 English is spoken in Canada.
・発音練習 speak - spoke - spoken
・例文の発音(2回)
Q:
英語が話されている国はカナダだけじゃありませんね。他にどんな国で話されていますか。→A:
America, England, Australia など
・挙げた国名を入れて全文を読む。
2)クイズ
Spanish |
is spoken in |
China |
German |
Switzerland |
Italian |
New Zealand |
French |
Brazil |
Chinese |
Spain |
・国名、言葉をカードに書いて、黒板を以上のように使う。
・カードの単語の発音練習
・生徒を指名して前に出てきてもらい、文を完成させる。正解なら全員で読む。
D: Comprehension
(1)New words
a)フラッシュカードを見て発音、意味の確認。
b)日本語を見せて英語を言わせる。
c)一瞬カードを見せて書かれてある単語を言わせる。
d)不規則動詞変化の発音練習。 write, put, build
(2)Understanding
"Open your textbook to page 34."
a)Tape listening b)Chorus reading c)Questions and Answers
1 tube という言葉は本文中にいくつ出てきたか。→4つ
2 tube
には2つ意味があります。時間をあげますから、その意味を考えてみて下さい。
→管、地下鉄
3 5,6,7行目にit
が3回出てきますが、意味は全て同じです。何のことを言ってい
ますか。→ a good book
4 8行目の the tube
とあるのは管か、地下鉄かどちらの意味ですか。 → 地下鉄
5 9行目の the tube
とあるのは管か、地下鉄かどちらの意味ですか。 → 地下鉄
6 10行目の big tube
とあるのは管か、地下鉄かどちらの意味ですか。 → 管
7 11行目の train lines の意味 → 線路
8 12行目の them は何のことですか。
9 13行目の the tube
とあるのは管か、地下鉄かどちらの意味ですか。 → 管
10 13行目の its name は具体的にどういうことですか。→ the tube
11 7行目 it helps me a lot
とありますが、どういう意味で役立っていると思いますか。
→ "tube" について学んだ。
E: Consolidation 本文のChorus
reading
指導案 2 (高校1年生対象)
T 指導者 96年度後期教育実習生
U 教材 Sunshine English Course T Lesson 7
V 本時のねらい: Lesson 7全体を通して、Kossur
の気持ちがどのように変化してい ったのかを理解できること。
W Teaching Procedure
A: Greeting
B: Review
(1)Lesson 7Section 369行目までのKossur
の気持ちをまとめることのできるプリントを配布する。(この支援システムではプリントの内容省略)生徒にこれまでの授業の内
容を思いださせ、プリントの空欄に語句を書かせる。テキスト、ノートを参考にさせる。
(2)プリントの解答をしながら、69行目までの内容を説明する。「この後、Kossurの感情の波はどう動いていくのか、今日の授業で感情の波を完成さ
せよう。」
C: Introduction to the new material
(1)New words: instructor の後に続けて発音させる。(2回)
(2)New expressions: instructor
の後に続けて発音させる。(1回)その後、説明する。
- even if ... even は強調。(例文を訳す。) stop 人 doing ... 人と doing
はSVの関係
settle down (例文を訳す。)
for all = with all, in spite of in case
〜だといけないので、〜の場合に備えて
以下の例文は板書して、生徒に訳させる。その後例文を音読させる。
For all his efforts, he didn't succeed.
(=Though he made efforts, )
Take an umbrella with you in case it rains.
(=in case of raining) |
D: Presentation of the new material
(1)Tape listening with the textbooks open
・Kossur
の気持ちを表す語句に注意させ、気持ちの変化を考えながら聞かせる。
・聞いた後、気持ちを表す語句を発表させる。
(2)Chorus reading
・instructor の後に続けて読ませる。
・Jeffと会って再び楽しい気分になっていたKossur が、この後Jeff
とどうなっていくか、
気持ちはどう変化していくか、などに注意しながら読ませる。
・Reading の後に Questions and Answers をすることを伝えておく。
(3)Questions and Answers
Q1a:Why did Kossur cry in her room?
A1a:Because she wanted the holiday to go on forever.
→Q1b Why did she wanted the holiday to go on forever? (You may answer this in Japanese.)
A1b 彼女はJeffと別れたくなかったから。休みが終わるとJeffと会えなくなるから。
宗教上夜出かけたり、男の子と二人で会ったりできないから。Jeffにまた会いたいと言われても会えないから、悲しい気持ちになった。
Q2a:Did Miss Brown notice Kossur was crying?
A2a:No, she didn't.
→Q2b:Did Kossur want to talk about her feeling to Mr.Macey?
A2b:No, she didn't.
→Q2c:どこからわかったか。 A2c: 74行目even if 〜を訳す。
*(説明) Mr.Macey にも話せないのだから、Miss Brown
に話すはずがない。
Q3: Did she look forward to seeing Jeff when she left the camp?
A3: Yes, she did.
*(説明) 79行目 looked and looked と探したことを強調している。
Q4: Kossur はこの時、どんな気持ちだったか、 自分がKossur
だったら、どんな気持ちに なるか、Jeff
はなぜ来なかったのか、について想像させる。
Q5: Did Kossur feel sad when she taught about Jeff after the school journey?
A5: No, she didn't. (89行目からわかる)
(4)Tape listening 今回の授業の範囲のKossurの気持ちの変化を復習するつもりで聞く。
E:Consolidation
(1)Review で使ったハンドアウトを使って、今回のKossur
の気持ちの波をまとめさせる。
(2)何人かの生徒に前に出てこさせて黒板の図に描き加えさせる。
(3)解説をする。
(4)L7全体をまとめる質問。
「いろいとなことがあった school journey ですが、終わってみて Kossur
はどう思っていますか。」→ The school journey was wonderful.
→成長したからこのように思えるようになった。
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