B6023.gif (1026 バイト)教育実習支援システム 広島大学附属福山中・高等学校

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音楽科

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1.実習にのぞむ心構え

まず,いうまでもないことですが,教師であるという自覚を持って実習にのぞんでいただきたいと思います。生徒は教壇に立った実習生を,優れた専門性を持った1人の音楽の教師と見ています。音楽の授業ではさまざまな内容を扱うので,音楽に関することは一通り何でもこなせることが望ましいのですが,人によっては得意,不得意の分野があるかもしれません。例えば,授業でピアノ伴奏をする時に,「わたしはピアノが専門ではないのでうまく弾けません」と生徒に言う実習生や,最初から他の実習生にピアノ伴奏を頼んで自分は歌うことに専念するといった実習生がときおり見受けられますが,これらは教師としての自覚が希薄なのではないでしょうか。授業が始まるまでに一生懸命練習し,努力した結果,それでもピアノ伴奏がうまく弾けなかったとしても,その熱意は生徒にしっかりと伝わり生徒は授業をフォローしてくれるものです。

次に,実習では生徒をよく見てほしいと思います。生徒を観察していると,そこからいろいろなことが見えてきます。自分の出した指示がちゃんと伝わっているか,どんな言葉や働きかけが生徒の意欲を引き出しているか,生徒は果たして音楽を楽しんでいるのだろうか,などなど。授業がうまく成立するかどうかは,いかに指導案を綿密に立てるかにも大きくよりますが,授業中は生徒の反応をよく見て臨機応変に対応することも大切です。

そして,音楽の授業では題材や指導内容, 指導目標を設定しますが,えてして目先の技術的な事柄にとらわれて,本来の大きな目標を見失いがちになります。その目標とは「音楽を通じて芸術を愛好する豊かな心を養う」というものです。このことを常に根底に置いて実習にのぞみ,成果を挙げていただくことを期待しています。

 

2.実習前の準備について

専門の分野や何か得意な分野があると,授業を行う上で役に立ちますが,さらに多種多様な音楽経験が授業に有効に生かされることも事実です。クラシックのみならず,ポピュラー音楽や世界の民族音楽,日本の伝統音楽などに普段から幅広く接しているとよいでしょう。

毎年実習生を見ていて,一番苦労しているなあと感じることはピアノの弾き語りです。放課後は皆必死で練習していますが,普段から自分が中学・高校の時に使った教科書などで弾き語りの練習をしておくことをお勧めします。伴奏もただ楽譜どおりに弾くだけでなく,生徒の声が小さいときなどは右手でメロディー,左手でハーモニーを弾いて補強するなど,いろんなパターンを使い分けできるようになるとよいでしょう。そして何より大事なのは大きな声で歌えることです。

また,器楽の授業ではリコーダーやギターを使うので,基礎的な奏法は身につけておいてほしいと思います。リコーダーは主にソプラノとアルトを使いますが,指使いはバロック式で統一していますので,ジャーマン式(ドイツ式)で覚えている人は注意してください。その他,鑑賞の授業では実習生の専門を生かし,管弦打やピアノ,声楽などの生演奏をすることもあります。生徒はあまり生演奏に接することが少ないため大変感動します。管弦の楽器や楽譜などは実習に持ってきても結構です。

最後に, これは準備ではないのですが,2週間の実習は体力的にもかなりハードなので,健康に十分留意し,万全の体調で実習にのぞんでください。




▼音楽科指導案の例

学年学級 2年C組 場所 音楽演奏室

1.題材

「夏の思い出」 江間章子 作詞 中田喜直 作曲

2.題材の指導内容と目標

(1)指導内容

歌唱は音楽活動の中で自己表現をするのに手軽な手段であり、かつ身近なのもで あ る。また自分自身の体全体を楽器として表現を行うために、感銘もより深く、音楽をす ることの喜びも大きくなる。そして「歌詞」が介在することで、音楽と言語の両方から、 その曲がどのような表現を求め、何を意図しようとしているのかなど、曲のイメージが より明確に伝わりやすい。言語と音楽とが共存し、それぞれが巧みに融合した「歌」を 楽しむということは、大変素晴らしいことである。
本時で取り上げる「夏の思い出」は、日本語の語感を十分に活かして作られており、 日本語の美しさを改めて実感することができる曲である。歌詞には尾瀬の自然が叙情的 に表現されており、その懐かしむような自然に寄せる暖かい気持ちは、まるで誰かに語 りかけているかのような穏やかな旋律とうまく融合している。16小節という短い曲の 中で、表現上の記号・標語が網羅されており、大変繊細な表現を要する歌であるが、生 徒にこれらの歌詞の内容を十分に理解させ、自分なりに心で受け止めさせた上で、より 一層豊かな表現の工夫を考えさせたい。そして「歌うこと」の素晴らしさ、喜びを感じ 取らせ、豊かな精神生活への糸口をつかませたいと思う。

(2)指導目標

1)歌詞の詩情に合った旋律の美しさを感じて歌わせる。
2)各自の声を全体のハーモニーに合わせて合唱させる。
3)日本語による歌唱部分と伴奏部分とが一体となった、日本歌曲の美しさを感じ取 らせる。

3.題材の指導区分

第1時 「夏の思い出」の詩の持つイメージを理解させ、主旋律の歌唱指導をする。
第2時 ニ長調を理解させ、「夏の思い出」をニ長調で階名唱させる。
第3時 「夏の思い出」の下声部の指導をし、二部合唱をさせる。・・・本時

4.本時の指導目標

1)歌詞の内容及び情景を十分に読みとり、歌詞を暗唱した上で斉唱を充実させる。
 
2)下声部をつけて、二部合唱をすることによる表現の幅広さを感覚的にとらえさせ、 歌う喜びを感じさせる。
3)二部合唱をする中で、旋律と和声との関わりをつかませて表現に活かさせる。

5.本時の指導過程

時 間 学 習 内 容 及 び 活 動 注意事項・留意点
11:00 教科書p.12,13
「夏の思い出」
挨拶、本時の学習内容について話す
<起立>
1.発声練習
・軽く運動させる(肩上げ下げ、首回し)
・レガート、言葉、スタッカートの組み合わせ
本時の最後に二部合唱を録することをいう
体をほぐし、良い姿勢を作らせる
口をはっきり開けさせる
「やっほっほっ」は腹筋を意識させる
11:05 2.前時の復習
・教科書p10「五月の歌」を歌わせる
・教科書p12.13「夏の思い出」1.2番を歌わせる
<着席>
楽しい雰囲気を作る
歌詞の内容、情景を思い出させる
11:10 ・歌詞を暗唱させる(3分)
・全員で暗唱して歌詞を読ませる
<起立>
暗唱する意味を話す
(・暗唱する価値のある詩である。・のびのびと歌えて声がよく響く)
11:15 ・暗唱して1.2番を歌わせる
<着席>
 
11:18 3.ニ長調の階名唱の練習
・各自読み方の練習をする
・上声部と下声部をそれぞれ階名で歌わせる
難しい生徒は書き込んでもよいことをいう
11:25 4.下声部の歌唱指導
・下声部を4小節ずつ範唱し。あとについて歌わせる
・下声部を通して歌わせる
両手で下声部を弾きながらう
右手で下声部を弾き伴奏す
11:30 5.二部合唱の指導
・教生全員で範唱する
・二部に分けて合唱させる(1番)
・パートを入れ替える(2番)
指導者は指揮をする
席の隣同士で上下に分ける
11:37 <起立>
6.仕上げ(録音)
・リハーサルとして1番を歌わせる
・録音したものを聴き、気づきをいう
・1.2番を通して歌わせる
<着席>
録音テープを聴かせて生徒に感想や気づきを聞く
パートは5.と同じ
各声部のバランスに注意して聴く
生徒2人に指名
11:43 ・指導者の感想、気づきを述べる
7.作曲者について
・中田喜直とその作品について話す
よいところはしっかりほめる

簡潔に
11:46 ・教科書p.53を開き、「雪の降る町を」を鑑賞する 指導者が歌う
11:50 8.まとめ、あいさつ  

 

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