文部省高等学校教育課程研究指定校 研究成果報告書

研究主題

「自ら学ぶ意欲を育てる教育課程の編成と、評価の方法の開発」

広島大学附属福山高等学校  校長 原 田  彰


T.学校の概要

1.課程・学科別・男女別生徒数

2.教職員数

校長 教頭 教諭 非常勤講師 合計
52 10 65

(注)当校は併設の中学校と一体となって、中・高一貫教育を行っています。

3.教育課程編成状況

(1)全体的な構成
1.1週間あたりの授業時数を32時間とする。(学級活動・クラブ活動を含む)
2.1時間を50分とする。
3.各学年30単位、合計90単位の修得をもって卒業のための要件を満たすものとする。
(修得のみは要件としない)
4.1年から3年までのHR編成において、コース制は取り入れない。
(2)選択科目について

1.地理歴史・公民について
@ 2年において、「日本史A」・「地理A」のいずれかを選択。
A 3年において1科目選択する生徒は、b群において「日本史B」・「世界史B」・
「地理B」・「倫理・政経」・「現代社会」から選択。
B 3年において2科目選択する生徒は、b群において「日本史B」・「世界史B」・ 「地理B」からさらに1科目選択。
C 3年における選択科目は、1・2年に履修した科目と同系列の科目の中から選択 しなければならない。
2.理科
@ 2年において、「物理TB」・「化学TB」・「生物TB」・「地学TB」から2科目 選択。
A 3年において、「物理TB+物理U」・「化学TB+化学U」・「生物TB+生物U」 ・「地学TB+地学U」の中から1科目または2科目選択。
B 3年における選択科目は、2年において履修した科目の中から、選択しなければ ならない。
3.芸術
@ 1年において、「音楽T」・「美術T」・「書道T」から1科目選択。
A 2年において、「音楽U」・「美術U」・「書道U」から1科目選択。
選択する科目は1年からの継続を原則とする。
B 3年においてc群で芸術を選択する生徒は、2年で選択した科目を継続して履修 する。
C 3年d群の芸術は、芸術T・芸術Uとの継続性は問わない。
4.3年の選択科目等の群構成について
@ a群−−必須教科(13単位)+特別活動2単位
A b群−−「地理歴史」・「公民」・「理科」合同選択群(12単位)
この中の科目から、「地理歴史」・「公民」の中から1科目または2科目「理科」の中から1科目または2科目を選択、合計3科目を選択する。
B c群−−「数学V」または「オーラルコミュニケーションC」+「芸術V」いずれかを選択。(3単位)
C d群−−「数学B」・「数学C」・「芸術V」・「情報技術基礎」から1科目選択。(2単位)
5.選択科目の講座は、希望者があった場合、開設する事を原則とする。

 

U.研究成果の要旨

1.研究のねらい
当校の研究主題は、「自ら学ぶ意欲と思考力、判断力、表現力などの能力の育成を図るための指導計画、指導方法及び評価の工夫」というテーマに沿って、決められたものである。教育課程研究指定校の研究は、現行の教育課程に沿ったものであることはいうまでもないが、21世紀に向けて教育のあり方を模索している現在、その内容はこれからの教育を、見通したものでなければならないと考えている。
1997年6月18日に発表された、中央教育審議会の第2次答申や11月17日に示された、教育課程審議会の中間まとめ(教育課程の基準の改善の基本方向の概要)を研究の指針の1つにして、各教科の具体的な研究目標に沿って、実践研究を進めた。
それぞれの教科についての研究のねらいは、教育課程の基準の改善のねらいに示されている「ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること」にある。当校は6カ年一貫教育の実践研究を1962年から行っており、その中でつちかわれてきた自由な校風は、すべての教育活動の中に根付いているが、これからの教育課程の研究においても、非常に重要な要素になると信じている。
あわせて、授業の評価をはじめとする、様々な評価の方法についての検討を研究の重要な目標と定めるとともに、研究自体の評価を指導教官に求めることにした。

2.研究実践の成果と問題点

@高等学校教育課程の研究の視点

平成9年6月26日に出された中央教育審議会第2次答申では、第1章の「一人一人の能力・適性に応じた教育の在り方」のなかで、(「ゆとり」の中で「生きる力」をはぐくむ)ことが述べられている。「生きる力」とは、自ら学び、自ら考える力など、個人が主体的、自立的に行動するための基本となる資質や能力をその大切な柱とするものであるとされている。当校においても、今回の教育課程研究の視点の1つとして、「生きる力」をはぐくむ教育活動の構築を位置づけ、各教科で具体的な取り組みを行った。各教科における研究は、次の4つの視点を複合的に含んだものせなっている。

1.今後高等学校にも導入が予定されている、総合学習への発展をめざしたもの
2.自発的な学習を促す学習活動の構成や、多様な選択制に対応した教育課程の編成

3.情報処理能力やコミュニケーションの能力の育成を図るもの。
4.生徒の内的な「生きる力」を育てるための、カリキュラムの作成や、優れた芸術作品や書物とのふれあいを可能にする学習活動の設計。

さらに、多様な選択制に対応した、教育課程の編成と、運用上の諸問題についての対応についても検討を重ねた。選択制の内容については、次の項で述べたい。

A当校の教育課程の特色

当校の教育課程は、教育課程の編成状況の項で報告しているように、理系・文系のようなコース制を取り入れていない。生徒は選択科目の履修状況によって、自分の進路等に対応した、学習を進めていくことになる。選択科目の単位数は、1年生は芸術科において2単位、2年生は地理歴史科・理科・芸術科において7単位となっており、3年生の17単位に比べて少ない。これは生徒の進路の決定時期と、それに伴う選択科目の決定時期が、たとえば大学入試の多様化によって、高等学校生活の後半にならざるを得ないことにも、関連している。
当校の教育課程は、高等学校1年・2年では基礎的・基本的な学習に重点をおき、3年では選択制の導入による、生徒の個性に応じた多様な学習に重点をおく形になっている。高等学校1年生からの、大幅な選択制の導入は、学習集団の形成が不安定になる、という問題があり、生活指導をふくめた学校生活全体のなかで、検討されなければならない問題であると考えている。
当校の教育課程は、多数の教育実習生の受け入れを行っていることもあり、標準的な時間数と、内容のものである。

B 各教科の研究主題

この研究指定における研究主題「自ら学ぶ意欲を育てる教育課程の編成と、評価の方法の開発」のもとに、各教科において教科毎の研究テーマをもうけ、教育課程の編成と、評価についての実践研究を行った。各教科のテーマは次の通りである。


国語科 「総合的な学習活動における評価を探る国語科教育」
地理歴史科

「地理学習における『地域調査』のあり方とその評価方法の研究」

「歴史学習におれる『意志決定』のあり方とその評価方法の研究」

公民科 「人間としてのあり方生き方についての自覚を育てる学習と評価」
数学科
「新しい学力観にたった授業実践とその評価」
理 科 「生徒の知的好奇心や探求心を高める総合理科の実践」
−総合理科の課題研究における自己評価と相互評価の試み−
保健体育科
「自らが取り組む選択制授業のありかたと評価」
芸術科音楽 「日本の伝統音楽における鑑賞意欲の育成と評価の研究」
   美術 コンピュータを利用した活動表現におけ「る授業編成と評価の研究」
   書道 「自ら学ぶ意欲を育てる『漢字仮名交じりの書』と評価の方法を考える」
家庭科 「家族・家庭生活の価値観の形成」
工業科 「高等学校普通科における『情報技術基礎』の学習指導」
 −学習内容の構成と評価−
英語科
「オーラルコミュニケーションBにおける教育課程と評価の方法について(含ティームティーチィング)」

C 評価の方法について

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