大阪教育大学教育学部附属平野中学校の実践事例
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総合的な学習を表すタイトル
開かれた学びの場JOIN(jungleof inspiration
(総合的な学習の時間を「JOIN」という名称で呼んでいる)
キーワード,分類
自由(課題)研究,学びの基礎,情報リテラシー,課題追求型,自分探し
総合的な学習に対する考え方
3年間を下記のように1〜4群(4期)に分けて実践
・JOIN1群(1年生での総合的学習)は,学びの訓練期間である。いわゆる「情報」を軸としたプロジェクト型の学習。
・JOIN2・3群(主に2・3年生)は課題追求の期間である。いわゆる「国際理解,情報,環境,福祉・健康」などをテーマとした個人内総合型の総合学習である。自ら課題を設定し,学び,考え,主体的に判断し,よりよく解決する資質や能力を育成する。
・JOIN4群(主に3年生3学期)は3年間の自分の歩みをまとめ,自らの生き方についての自覚を深める。
総合的な学習の目標(目指すもの)
「自ら課題を設定し,学習内容・方法を決め,取り組み,その成果はどうであったかを自ら反省する力」を育成することを目的としている。そして「そろえる」ことから「個が生きる」ことへの転換をはかる。
総合的な学習の実践形態
JOIN1群は学年単位,領域によっては小グループ,個人単位の学習
JOIN2・3群は主にグループ,個人単位の課題探求型の学習
推進組織
全教官で指導,生徒がテーマを設定する課題研究の学習活動ではそれぞれのグループに指導教官が付く。
文献
子どもと創るこれからの選択・総合学習
−開かれた学びの場JOIN 支援と評価のポイント−
大阪教育大学教育学部附属平野中学校著 第一法規出版
コメント(実践から参考になること)
中学校3年間の総合学習を構成するJOIN1群〜4群のコンセプトと実践形態がユニークで素晴らしい。特にJOIN2・3群では,生徒が設定した実に多彩なテーマがあり,それを支援する指導教官のきめ細かいアドバイスやカウンセリングなど,全体の枠組みがしっかりしている。また,「個が生きる」ための評価についても充実した研究がなされている。

 


T.JOINとは

大阪教育大学教育学部附属平野中学校が平成4年度から平成6年度にかけて,文部省の研究開発指定校として,「選択履修の新しい試み」として取り組んだ授業システムの名称であり,現在では総合学習へ発展している。

JOINでは,「自ら課題を設定し,学習内容・方法を決め,取り組み,その成果はどうであったかを自ら反省する力」を育成することを目的としている。そして「そろえる」ことから「個が生きる」ことへの転換をはかることを目的としている。 

U.JOINのシステム

1.JOIN4群制

各学年を前期(4月〜12月)と後期(1月〜3月)に二分し,3年間を4分割(4群)している。

 

 

2.JOIN 1群(1年生での総合的学習)とは訓練期間である。
いわゆる「情報」を軸とした,プロジェクト型の総合学習である。
JOIN 2・3群のOSとなり,かつ,必修教科の基礎となる力を育成することを目標とする。
情報リテラシー ・文章を創りあげる力の育成
情報を処理する能力の育成
効果的に視聴覚機器を用いる力の育成
課題設定能力  ・自分にあった課題を見つけ,追求できる力の育成
プレゼンテーション能力
適切に自分を表現できる力の育成
質問することができる力の育成
発表し,表現する力の育成
※JOIN 1群とは
JOIN1群では,各教科やJOINの基礎となると考えられることをまず学びとってもらいます。
それは,話し方や質問の仕方,図書室の使い方や文献の調べ方,グラフの読み方や処理の仕方,課題をどんなふうにして立て,まとめ,発表するのかなど,多くのことを上げることができます。
これらの力は,自ら学ぶための基礎として,最小限身に付けていかなければならないものだといえます。このような力を本校では「情報リテラシー」と呼び,21世紀にはばたく皆さんにとって基礎的な力になるものです。
これらの力を,クラスの皆と楽しく学び取りながら,夏休みの自由研究を行えるようにしていくことが,1学期の大まかな目安になります。そして,夏休みの自由研究をどのように「まとめ」「発表」していくかについて,学び取ることが2学期の大まかな目安となります。その中で,特に2学期は,さまざま機器の利用の仕方も学び取っていってもらいます。
3学期は,2年生のJOINに備えて,自分自身の課題を決めるための「カリキュラムガイダンス」になります。具体的には,先輩たちの発表を聞く・見学会に参加するなどです。「価値ある情報に接する」ことで自分自身の課題を設定してください。
JOIN 1群の実施モデル
JOIN 1群のカリキュラム(平成10年度の抜粋)

一学期

二学期 三学期
オリエンテーション(1h)
※JOIN 1群の目標や内
容の概略を把握させる。
※活動の意欲付けを行う。
オリエンテーション(1h)
※二学期の目標を提示し,活動
を促す。
※夏休みの課題を相互評価し,
改善の視点を養う。
まとめの活動(3h)
※課題を発表用にまとめる
活動を通じてプレゼンテ
ーションの工夫をする。
聞き取りゲーム(1h)
(メモの取り方)
※目当てを持って情報を聞け
るか。
※情報再現ができるメモを取
れるか。
グルーピング(1h)
※課題意識を深める。
※グループを形成する。
発表会(2h)
※相互に発表・評価をおこ
なうことでよりよいプレ
ゼンテーションのあり方
を考える。
記者会見にチャレンジ(1h)
(メモの生かし方)
※どのようにすればよい質問
ができるか。
※メモを生かした質問をする
ことができるか。
OHP・ビデオカメラの活用方法
(1h)
※情報の効果的な提示方法やま
とめ方を知る。
ガイダンス発表会(2h)
※先輩の事例を知ることで
来年度の課題を考えるき
っかけとする。
新聞創りにチャレンジ(3h)
※メモを基に情報を的確に再
現できるか。
※他の人に理解してもらえる
ようにまとめられるか。
※独自性が発揮できるか。
課題設定(1h)
※課題を設定し,担当教官とカ
ウンセリングをおこない活動
計画を作りあげる。
 
夏休みの課題と新聞の相互評
(1h)
※夏休みの課題を知り2学期
の目安を知る。
※新聞記事を相互評価し,よ
いまとめ方を知る。
ワープロの取り扱い(2h)
※文字情報を効果的にまとめる
手段としてのワープロの取り
扱い方の基礎を学ぶ。
 
  課題追求活動(3h)  
  ※課題を追求することを通じて
調べることの楽しさを味わい
意欲を高める。
 
  課題追求とまとめ(2h)
※課題をまとめ発表内容を考える。
 
JOIN 1群夏休み課題研究の主なテーマ例
日本各地の言葉を調べてみよう
自分史を創ってみよう
新聞大研究
古典芸能大研究
我が町の歴史探訪−こんなにあった謎−
国立民族学博物館で異文化大発見
私たちのまちの福祉は
アジアって素晴らしい,こんな恵み発見
身近な環境問題と私たちの暮らし
こんなことにも古代が生きている
お年寄りに聞く「今」と「昔」
ボランティア体験レポート
「モノ」にこだわろう
「音」にこだわろう
世界の国々を紹介しよう
身近な地域再発見
身近な生活,身の回りにある数学について  調べよう
数学に関するパズルについて研究しよう
身近な疑問について調べよう
身近な植物について調べよう
身近な動物について調べよう
身近な地形について調べよう
世界の民族音楽
楽器の歴史
「赤」(他の色でもよい)を集めよう
美術館に行ってみよう
社長になろう
スポーツ今昔
スポーツおもしろ記録集
身近にある「木」の図鑑をつくろう
「葉っぱの図鑑」をつくろう
ゴミ問題
食品について
まちの中の英語さがし
歌の中の英語さがし
3.JOIN 2・3群とは,課題追求期間である。
いわゆる「国際理解,情報,環境,福祉・健康」などをテーマとした個人内総合型の総合学習である。
自ら課題を設定し,学び,考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力,態度を育成することを目標とする。
4.JOIN 4群とは,自らを顧みる期間である。
いわゆる「自分探し」のための個人内総合型の総合学習である。
3年間の自分の歩みをまとめることで,自らの生き方についての自覚を深めることを目標とする。

V.課題を設定するための仕掛けや仕組み   「自分探しの旅」へのいざない・・・ガイダンス期間

1.ガイダンスは,なぜ必要か
「自ら課題を決定し,学習内容・方法を決める」ことができる能力とは「迷いの能力」である。
「低い迷い」から「高い迷い」へと導くことがガイダンスの目的である。
何も情報を提供せずに課題を設定させることは,「迷う自由」を奪うことになる。
「課題を設定しない(できない)」生徒がいることは,教師が硬直化した教育課程のなかで「迷  う自由」や「迷う機会」を奪っていることになる。
2.どんな「しかけやしくみ」を用意したか・・・カリキュラムガイダンス
「低い迷い」から「高い迷い」へ
ガイダンス1
価値ある情報
に接する

ガイダンス2
課題を設定し,指導を
希望する教諭と相談する

ガイダンス3
自由研究を
試行する
3.ガイダンス1とは
(1) JOIN見学会(無学年・希望制)・・・地域の教育力を取り入れる。

平成10年3月実施例(以下の11施設で実施)

国立民族学博物館 ピース大阪  下水道博物館  市立科学館
パナソニック 松下電器技術館 近江飛鳥博物館 鶴見緑地
お米ギャラリー 生活ディリパ  キッズプラザ  
(2) JOINビデオ視聴会・・・映像からの情報を取り入れる。

領域別=自然(環境)・国際・人間社会・文化・スポーツ・福祉など

(3) JOIN発表会・・・活動をまとめる。自己の課題をとらえ直す

他の取り組みを知り自己の課題を考える

多様な発表の場=中間報告会・文化祭・発表会・報告書

4.ガイダンス2・・・課題を設定し,指導を希望する教諭を決定する。
「低い迷い」から「高い迷い」へ・・・カウンセリングの重視 
フィードバックのシステム導入
5.ガイダンス3・・・自由研究を試行する
課題の変更や追求方法の変更の容認

W.JOINの評価

「結果至上主義」から「過程重視主義」へ
自己評価と形成的評価の重視
JOIN(総合的学習)は,文章表現で評価を・・・教師の生徒の活動の読みとり

4つの観点項目と14の行動項目で

観点項目 下位項目(行動目標)

1.課題を設定する力
・興味関心が持てたかどうか。
・より良い課題,より追求に値する課題を求めようとしたか。
・学習目標の設定と学習方法の発見ができたか。

2.課題を追求する力
・課題に意欲を持って,ねばり強く取り組めたか。
・課題に見通しを立てて,計画的に進められたか。
・課題に対して,あらゆる情報を活用して取り組めたか。
・グループのメンバーと協力して取り組めたか。

3.自己を出し切る力
・研究したことをわかりやすく伝えられたか。
・自分らしさを出せたか。
・積極的に自分自身を表現できたか。

4.自己を評価する力
・効果的に進めたか。
・自主的に取り組んだか。
・評価の基準・観点を自分で立てたか。
・他者の評価(基準)を受け入れたか。