神戸大学発達科学部附属住吉中学校の実践事例
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総合的な学習を表すタイトル

新たなる共生を求めて−生きる力を育む総合学習−(研究主題)

キーワード,分類

共生,つながり

総合的な学習に対する考え方

○子どもの生活や現代社会の抱える今日的課題に焦点をあてた学習をすることで,人や環境,文化との望ましい共生を志向する態度や能力を育成する学習
○学習者が学習課題を内面化して,課題と自分自身とのかかわりを理解し,「自分に何ができるか」を考え,行動できる力を身につける学習
○身につけた知識や学び方を生かして,多角的な視点で課題をとらえ,多様な手法を用いて追究する学習

総合的な学習の目標(目指すもの)

社会の大きな変化に対応し,子どもの関心や意欲に応じた総合学習を通して,21世紀をたくましく生き,「新しい共生を」求める子どもを育成する。

総合的な学習の実践形態

1 必修総合学習(1年生対象)
次の3領域のそれぞれに関連するテーマや,複数の領域に関わるテーマを準備。
「人間」領域:様々な人とかかわり共に生きることができるように,人間の生き方
に迫る学習領域。
「環境」領域:自然環境や社会環境,生活環境との望ましいかかわり方を探る学習
領域。
「文化」領域:国内外の様々な文化に関する理解を深め,文化を尊重し,文化との
望ましいかかわり方を探る学習領域。
2選択総合学習(2・3年生対象)
原則として2・3年生担当教官が一人1講座(全15講座)を受け持つが,活動内容によってティームティーチングによる指導を展開する。
3自由総合学習(1〜3年生対象)
必修・選択総合学習終了後,夏休みを利用して行う。
自由総合学習では教科の学習として分類が難しい総合的なテーマに取り組ませる。

文献

神戸大学発達科学部附属住吉中学校研究紀要第45号(1998)

コメント(実践から参考になること)

必修総合学習(1年)で総合学習への関心を高め,選択総合学習(2・3年)で知的能力を高め, 実践的行動力を身につけさせ,自由総合学習(1〜3年の夏休み)で課題を追求する力を高めさ せるという生徒の発達段階に応じた取り組みである。また,校外の施設(情報ソフト・人材バン ク)などを利用できるなど,総合学習に必要な環境も工夫されている。


1.3つの総合学習

必修総合学習(1年生対象)

情意面を激しく揺さぶり総合学習への関心を高めることが最大の目標である。そのため,学習過程において,課題を多角的にとらえることや,多様な手法で追求することなどを体験的に学習する場を設定する。学習内容は,次の3領域のそれぞれに関連するテーマや,複数の領域に関わるテーマを準備する。

「人間」領域:様々な人とかかわり共に生きることができるように,人間の生き方に迫る学習領域

「環境」領域:自然環境や社会環境,生活環境との望ましいかかわり方を探る学習領域

「文化」領域:国内外の様々な文化に関する理解を深め,文化を尊重し,文化との望ましいかかわり方を探る学習領域

選択総合学習(23年生対象)

必修総合学習で設定した領域に分類されるテーマや複数の領域にまたがるテーマを追究する講座を設定し,生徒はすべての講座の中から1つを選択して学習する。講座では,それぞれがテーマを深く追究する能力を身につけるために,学び方を身につける学習から生徒が主体的に研究活動を行う学習へと展開する。

原則として23年生担当教官が一人1講座(15講座)を受け持つが,活動内容によってティームティーチングによる指導を展開する幅のある学習とする。

自由総合学習(1〜3年生対象)

必修・選択総合学習終了後,夏休みを利用して行う。本校が夏休みに行ってきた自由研究を自由総合学習として位置づける。これまでの自由研究では教科の内容の中から興味あるテーマをそれぞれが設定して取り組んできたが,自由総合学習では,教科の学習として分類が難しい総合的なテーマに取り組ませていく。さらに,課題を追究する力をより高めるために,研究の構想や計画段階での指導を充実させる。全体オリエンテーション後に,担当教官との相談時間を十分に確保する。この時,様々な手法を用いて追究できるように助言する。また,研究をまとめる段階でも時間を確保して,考察や成果の生かし方について助言する。 

【総合学習の流れ】

1学期 夏休み 2学期 3学期
必修総合学習(1年生)        
選択総合学習(23年生)        
自由総合学習(全学年)        
教科・道徳・特別活動 総合学習とリンクした学習

2.総合学習に必要な環境

1情報ソフトの充実

校内にある関連図書及び視聴覚ソフトを充実し,校外にある関連図書の一覧及び検索についての情報や方法などを提供する。

2人材バンクについて

神戸市が開設している「KOBEまなびすネット」(生涯学習市民講師登録制度)を活用する。さらに,本校の在校生や卒業生の保護者を対象とした様々な生涯学習活動を支援する講師や情報提供を学習内容に応じて紹介することのできる登録制度を設ける。

3.総合学習の実践

1必修総合学習

1年を対象とし,主に学級・学年を中心に学年の教師がティームティーチングで指導し,学習 形態は展開に応じて個人・小集団・生活班・学級学年を使い分ける。

<文化領域>
「世界をしろう」
<人間領域>
「身近なボランティア」
<環境領域>
「ゴミの行方」

【必修総合学習の流れ】



リ テ
エ ー
ン シ

 
必 修 総 合 学 習
 








4月 1学期(4〜7月)  7月〜夏休み

2選択総合学習

必修総合学習の3つの領域に分類されるテーマに基づいて講座を設定し,生徒は全ての講座か ら1つを選択して学習する。それぞれのテーマを深く追求するための学び方を身につける学習(4 時間)から,テーマをさらに細分化したサブテーマを選択して,生徒が主体的に研究活動を行う 学習(14時間)へと展開する。知的能力を高め,学習の成果を生活や社会の中で生かすことが できるような実践的行動力を身につけさせる。

【学習の流れ】 講座名一覧

講座の概要説明(3月中旬)   領域 講座名 
 

人権について考えよう
第1回希望調査(3月中旬) 仕事と生きがい
  世界平和 〜ぼくたちにできること〜
第2回希望調査・面接(4月中旬) ボランティアをしよう
  人間の心とからだの健康
選択総合学習(〜7月上旬)

オリエンテーション(体験学習)

個人テーマの決定と学習計画

テーマの追究(研究活動)

研究成果の発表


健康と生活
資源・エネルギーとわたしたちの生活
生物と共生
大気と生活
水と生活

わが街の伝統文化
神戸の中の世界
わが街の文学Watching
わが街の生活文化
  人のつくってきた諸制度

3自由総合学習

必修・総合選択学習で学んできたことに関わりのある研究課題を設定し,追求することにより, さらに発展した学習を行う。研究の成果は,校外の発表会や作品展に積極的に出品・出展させる。

【学習の流れ】

1時間目:オリエンテーション
2時間目:担当教官との研究相談
研究活動(夏休み)
3時間目:発表準備・相談
4時間目:発表会
5時間目:発表会
6時間目:学習のまとめ

4.道徳活動と総合学習

総合学習を通して「新しい共生」を求める資質や能力,態度を育成するためには,課題を受け入れる広い心や,他の人と課題を共有し共に解決していこうとする態度を育むことが必要である。 総合学習の中で扱われる道徳的事象や道徳的価値に関する知識・理解を深めたり,情操を深めたり,道徳的体験をしたりするために道徳の時間を活用する。 

5.特別活動と総合学習

本校では,これまで学級活動や行事を通して,それぞれの個性や能力を生かし,集団としての力を伸ばすことで自己教育力を高めてきた。また,共生を目指す総合学習は仲間同士が互いを尊重して,共に協力しようとすることが不可欠である。そこで,総合学習と特別活動が横断的に内容を補充することでより効果的に自己教育力を高めることが必要である。また,総合学習の中で実施されるほかの教育システムや地域との交流,学習成果の発表や情報発信の機会として特別活動を活用する。

3領域から見た特別活動

総合学習と関連をはかる上で,まず3領域の視点からその内容を見直すことが必要となる。

人間の生き方に迫る学習
環境との望ましい関わり方を探る学習
文化との望ましい関わり方を探る学習
「テーマ別月間方式」の導入

今まで独自に展開していた各行事やその取り組みをテーマ別にまとめ,特定の期間に実施す  る。メリットとしては,学校全体の各取り組みを同一テーマに沿って行うことで,行事に対す  る生徒の意識を高めることが可能になると考える。また,関連する内容を並行して取り組める  ため,重複する指導過程を合理的に削減できる。

自治活動を中心とする特別活動の見直し

生徒主体の全校自治活動という組織の活動を特別活動の中心に据えることで,生徒の手による特別活動の活性化を図る。