山口大学教育学部附属山口中学校の実践事例 |
住 所 |
山口市白石一丁目9番1号 |
郵便番号 |
753-0070 |
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電 話 |
0839-22-2824 |
FAX |
0839-21-0103 |
総合的な学習を表すタイトル |
生きる方向を求めて学ぶカリキュラムの開発 「クロスカリキュラムで行う総合単元学習」 「合科的発想による授業」 |
キーワード,分類 |
生きる方向を求めて,クロスカリキュラム,合科的授業,顕在的カリキュラム,環境学習,国際理解学習,地域学習 |
総合的な学習に対する考え方 |
「単元」を「ものごとがわかっていく順序に学習内容を組み立てたもの」ととらえ,総合的な学習を進めている。内容的には地域学習,国際理解学習,環境学習の3単元を開設している。総合単元学習の活動は,特別活動の時間を中心に行われているが,教科の学習として成立しながら,しかも総合単元学習の活動ともなりうるような授業を構想し,年間計画に位置づけている。また,教科・道徳・特別活動の三つの領域をうまく関連させスリム化を図り,より高い教育効果をねらっている。 |
総合的な学習の目標(目指すもの) |
総合単元学習に下記のような特性を持たせることで,「自分探し」と同時に,生きて働く知恵,具体的には,問題に気づく力,課題をつくる力,情報を集める力,情報を整理する力,先を見通す力,計画を立てる力,行動する力,表現する力などを,生徒自らが身につけていくこと。
1生徒の生きる方向とかかわりの深いテーマをもたせる。 2教科・道徳・特別活動の3領域の関連・融合を大切にする。 3生徒の興味・関心を生かした体験的活動を重視する。 |
総合学習単元の実践方法 |
地域学習 1年生後期(10月)〜2年生(5月) オリエンテーション → 教師による情報提供 → 個人課題設定 → 個人課題紹介(ポスターセッション)→班編制 → 班の課題設定 → 課題追究方法考案 → 訪問先電話連絡 → 依頼状作成 →日程表作成 → 当日の調査活動 → 研究成果発表(ポスターセッション)→ まとめの冊子作成 国際理解学習 2年生後期(10月)〜3年生(5月) オリエンテーション → 教師による情報提供 → 個人課題設定 → 研究グループ編成 → 調査活動(留学生との方等を招いての講演会なども含む)→ 調査結果発表会 → 訪問先(韓国)の中学生との文通 → 当日訪問 → 報告会 → まとめの冊子作成 ※地域学習との違い,現地(韓国)での調査活動はほとんど不可能(言葉の問題)なので,国際理解学習における課題は,事前の情報収集(その国の文化などを多面的に知る)という意味合いを持つ 環境学習 3年生後期(10月〜) オリエンテーション → 教師による情報提供 → 個人課題設定 → 個人課題追究 → 追究成果発表会 → まとめの冊子作成 ※環境学習は,それまでの総合単元学習,教科の学習の総仕上げ的な意味合いを持たせているため,課題設定から追究,まとめまですべて,個人活動としている。 |
推進組織 |
総合単元学習班 カリキュラムの研究開発という見地に立って,教育課程班,学園祭見直しプロジェクト,総合単元学習班,教科班という四つの組織を設置している。 |
文献 |
山口大学教育学部附属山口中学校研究紀要第42号(1998) |
コメント(実践から参考になること) |
合科的授業も含めた3年間のカリキュラムの一環として総合単元学習が位置づけられている。学習内容を地域学習・国際理解学習・環境学習に絞ることでスムーズなクロスカリキュラムが行われているように思われる。たとえば地域学習では生徒自身が課題を立て実地調査をしていき,その過程でそれぞれの教科がかかわりあいを持つので,生徒自身の自主的な活動が十分保障されつつ,教師の指導も不可欠になっている。 |
1.研究主題と研究仮説 |
「生きる方向を求めて学ぶカリキュラムの開発」 |
研究主題の「生きる方向を求めて学ぶ」とは,生徒に「どんな生き方がしたいか」「どんな人間になりたいか」を考えさせるのではなく,自分自身の興味や関心を自分で発見してほしいということである。また,「カリキュラムの開発」とは,生徒が自分とは違う他者の中で,様々な角度から「自分探し」ができるようにするため,学校教育の中で私たちにできることは何かを考えるということである。 |
2.カリキュラムのとらえ方 |
「カリキュラム」とは,私たち教師が学校をつくっていくときの様々な活動を意図的,計画的に体系づけた全体計画ととらえている。「カリキュラム」には,教科,道徳,特別活動,学校行事などのように年間指導計画という目に見えやすい形で表すことのできる,いわゆる「教育課程」にあたる「顕在的カリキュラム」と,日々の生徒会活動や学級会活動など,形としては見えにくい「潜在的カリキュラム」の二つがあると考えている。 |
今期の研究の対象範囲は「顕在的カリキュラム」の部分である。そのなかで,今期取り組んでいるのは,教科,道徳,特別活動それぞれと,「クロスカリキュラムで行う総合単元学習」,そして「合科的発想による授業」である。 |
本校が考える「クロスカリキュラム」とは,あるテーマのもとで,教科,道徳,特別活動の3領域を無理なく関連づけて,体験的な活動を通して総合的な学びを保障していこうとするカリキュラム編成の考え方のことである。 |
合科とは,学習内容や学習活動が複数教科にまたがる場合,該当の教科で協力して一つの授業や単元を構想し実践していくものととらえている。 |
次の図は上記のカリキュラムのとらえ方を図式化したものである。
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3.総合単元学習 |
総合単元学習では以下のような三つの特性を持たせることで,「自分探し」と同時に,生きて働く知恵,具体的には,問題に気づく力,課題をつくる力,情報を集める力,情報を整理する力,先を見通す力,計画を立てる力,行動する力,表現する力などを,生徒自らが身につけていけるのではないかと考えている。 |
1生徒の生きる方向と関わりの深いテーマをもたせる。
2教科・道徳・特別活動の3領域の関連・融合を大切にする。 3生徒の興味・関心を生かした体験的活動を重視する。 |
総合単元学習を地域学習・国際理解学習・環境学習の三つの単元に分け,それぞれを次の図のように関連づけている。 |
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4.総合単元学習への各教科の関わり方 |
《国語科》 |
○「地域学習」 |
自分たちの誠意や熱意を手紙という形式で伝える授業。 |
「地域活動」は山口県全域を学習の場にし,班単位で活動する課題解決学習である。例えば「萩 の街並み保存の苦労にふれる」といったような課題のもと,現地を訪問して調査活動を行う。訪 問してお話を伺う場合,一応電話で了解を得た後,訪問の依頼状を書く。 |
《社会科》 |
○「地域学習」 |
1地域をとらえていく視点を広げる授業 |
2フィールドワークの仕方やまとめ方を学ぶ授業 |
○「国際理解学習」 |
1課題追求意欲を高めていくための情報提供の授業 |
2国際理解への新たな視点を持てるような授業 |
3国際理解学習の成果を生かすような授業 |
○「環境学習」 |
1多様な課題意識を生むための情報提供の授業 |
2新たな視点を持ち,学びを広げ深めていく授業 |
3環境問題を教科の枠を越えた視点でとらえる授業 |
4環境問題に関わる既習事項を関連づける授業 |
《理科》 |
○「環境学習」 |
1環境問題についてのアンケート |
2「身近な物質の分離と同定」の授業 |
物質を微視的な見方で考える物質概念の形成のための学習 |
3「水をきれいにしよう」の授業 |
ろ過・凝集沈殿・活性炭の利用などの物質を分離する方法が,実際に水の浄化に利用されてい ることに気づくことと,新たに微生物を使った水の浄化実験を計画し,実験によって物質が分離 できたかを確認することを目的とした内容。 |
《技術・家庭科》 |
○「地域学習」 |
1身近な食べ物に関心を持たせるために校外での調査活動を取り入れた授業 |
2課題解決学習の解決方法として校外での調査活動を取り入れた授業 |
《英語》 |
○国際理解学習 |
視野を広げる「外国生活での心がまえ」の授業 |
外国で活動する際気をつけることを直接ALTを訪問し英語で聞く活動 |
ア 外国生活についての質問を出す…0.5時間 |
イ グループを作り質問内容を吟味する…3.5時間 |
ウ グループで質問文を完成する…1時間 |
エ 英語で情報を聞き出す…1時間 |