Science Partnership Project
2007

広島大学附属福山中・高等学校

 

 

■宇宙からみる地球環境   〜リモートセンシンク技術〜

広島工業大学環境学部  管 雄三 先生

8/9学校で講義演習,8/10広島工業大学で実験演習  参加は40

 

本講座では,人工衛星リモートセンシング(遠隔探査)をテーマに実施する。この人工衛星によるリモートセンシングは今後,植生や農地利用また海の利用など農業,水産業などで幅広い活用が期待されている分野である。また,地球環境測定としても重要な技術で,実際に自然災害に際して広島工業大学ではいち早く被害の状況把握を行ったりして防災にも活用しようとしている。現在NASAUSGS(米国地質調査所)およびESA(ヨーロッパ宇宙機構)とライセンス契約を結び、ランドサット衛星やエンビサット衛星など各国の人工衛星から送られてくる観測情報を直接受信できるのは、全国でも広島工業大学だけあり,注目を集めている分野である。

 このようなリモートセンシングをテーマに,生徒たちには,最先端の技術がどのように活用されているのかを学び,理工学分野の興味・関心を高めることを目的とする。また,実際に測定している施設(高度地球環境情報研究センター)を見学するとともに,人工衛星から送られてきたデータを処理して画像化する実習を行うことで,リモートセンシング技術の初歩を学び習得するとともに,地球を宇宙からみる体験を通して,新たな環境問題に対する態度を育成する。

 また,観測データに基づいて科学的に考察する活動を取り入れることで,科学的思考力を養っていきたい。

 

 

■X線でみる宇宙   〜ブラックホールをのぞいてみよう〜

宮崎大学工学部   廿日出 勇 先生

 8/16学校で講義実習,8/17実習演習まとめ  参加は30

 

本講座では,]線天文学をテーマに宇宙からの情報を元に論理的な考察の積み重ねにより宇宙の姿を明らかにしていく手法を学び,コンピュータによるシミュレーションや演習を通して実際に天文学の手法を体験することを目的に実施する。

 近年の天文学は可視光による観測だけでなく,赤外線や紫外線・]線など,さまざまな電磁波を利用した観測によって多くの知見を得てきた。ブラックホールも]線による観測でその姿を捉えることができた。可視光で天体を観測する場合に比べ,]線での観測では,観測機器や観測のための人工衛星なども手作りでひとつずつ作られていく。今回の講師にはそうした現場のようすを紹介いただき,天文台での観測とは異なる天文学の世界へ生徒を誘っていただく。

 生徒たちには,最先端の天体観測技術を学び,天文学だけでなく観測技術を含めた幅広い理工学分野への興味・関心を高めてもらいたい。また,実際に]線観測衛星によって得られたデータを処理する実習を行い,]線で宇宙をみる体験を通して,宇宙を観測する方法を理解し,未知の分野を科学的に解明していくことの喜びを感じることができるように期待する。

 

 

■再生医療の最前線   〜からだを蘇らせる材料科学・生物医学〜

      京都大学再生医科学研究所  田畑 泰彦 先生

 11/17講義演習,11/18学校で実験演習 参加は30

 

本講座では、再生医療をテーマに取り上げ、その最前線とそれを支える材料科学、生物医学の研究の現状に触れる。

 イモリのしっぽが再生する現象を私たちのからだで起こし、病気の治療に役立てようという試みが再生誘導治療(一般には、再生医療と呼ばれている)である。その基本アイデアは、細胞のもつ能力を高め、自然治癒力を介した生体組織の再生誘導である。再生医療を実現させるためには、再生現象に関わる細胞の生物医学研究と細胞がうまく働くための周辺環境を作る材料科学研究の両方が必要である。

 再生医療を実現していくために、どのような研究が行われているのか?どのような基礎知見と技術が必要なのか? その最前線はどのようになっているのか? などについて、講義と実習を通して、生徒たちに理解してもらい、再生医療への興味と関心を高めることを目的とする。また、新しい医療技術には、医学だけではなく、生物学、薬学、材料科学などの異なる研究分野との連携が必要であることを理解してもらう。一つの研究分野だけにとらわれるのではなく、これまでの研究領域の枠を超えたものの見方、考え方の重要性を学んでもらう。

 

 

■水環境の化学

フローインジェクション分析法(FIA)を用いた化学的酸素消費量(COD)の測定

岡山理科大学 理学部化学科  横山 崇 先生

 12/8学校で講義演習,12/9岡山理科大学で講義演習  参加は40

 

本講座では,「フローインジェクション分析法(FIA)を用いた化学的酸素消費量(COD)の測定」をテーマに実施する。このフローインジェクション分析法(FIA)は,内径0.51.0mmの細いチューブ内を連続的に流れる液体(キャリアー溶液)に試料を導入し,別の連続的に流れる(試料と特異的な化学反応する)反応試薬と混合・反応させた後,下流に設置した検出器で反応生成物を測定する方法である。このフローインジェクション分析法(FIA)は,従来の手分析では問題となっていた,試料の前処理,試薬の添加,反応,検出までに要する時間や,大量の試薬の使用や有害廃液などを解消した画期的な分析法である。

 今回は「水環境の化学」をテーマとして,生徒たちが,最先端の分析化学技術がどのように活用されているのかを学び,化学分野の興味・関心を高めることを目的とする。

本講座では,実際に生徒たちが学校近くの川や池から汲んできた水を測定することで,フローインジェクション分析法(FIA)技術の初歩を学び習得するとともに,身近な水環境に関する問題に対する意識を高めることをねらいとする。