SPP : 環境にやさしい材料科学の世界を探る
岡山大学環境理工学部環境無機材料開発研究室 三宅通博先生
身のまわりの環境保全のために有効な科学技術の事例を、実験・観察を通して体験的に学び、身のまわりの環境を保全するためには科学の力を活用することが大切であるという、環境保全の重要性と意義を学ぶ。
環境保全の最先端の技術として、可視光応答型光触媒の開発、高効率有害物質除去材料の開発などを紹介し、環境浄化材料のはたらきやしくみを学ぶとともに、関連する実験を通して、これらの技術が身のまわりの環境の保全をすることにどのように役立ってるのかを学ぶ。
第1日目は、環境にやさしい材料科学の具体的な事例を通して、環境保全の意義や重要性について、生徒達の間での意見交換や議論を深めながら学んでいく。その際、地球温暖化を防止するために有効な燃料電池やエネルギーの有効利用のために必要な技術として不可欠な超伝導物質を使い、実験・観察を行う。これらの実験・観察を通し、環境保全に対して科学技術が果たす役割の重要性を実感することができる。
第2日目は、岡山大学環境理工学部環境無機材料開発研究室の設備を用い、数名のグループごとに、大学でしか体験することができない最先端の環境浄化材料を用いた実験を行い、最先端の環境浄化技術にふれる。最先端の研究や技術に直接触れ、将来の進路選択に生かしていくことができる。
(対象:高校生 希望者)
SPP : レスキューロボット工作教室
広島大学工学部 山本透先生
近年、日本の製造業の空洞化によって生じているものづくりに対する気運の低下に伴い、若者の理工系離れが進み、将来のものづくり技術の低下が懸念されている。このような状況においては、ものづくりの計画と実行に関わる概念や実践力の発達を促す「動機(Plan)」⇒「設計・製作(Do)」⇒「評価(Check)」⇒「改善(Action)」をしっかりと意識していかなければならない。このPDCAサイクルの学習形態を意識した取り組みを実践し、ものづくり技術が、人の生活にいかに関わるのかを考えることが重要であり、ロボット技術においてもこのことを意識しておこなっていきたい。
人の生活とのかかわりを意識したロボットとして、人命救助(レスキュー)を題材とする。人命救助を題材としたロボット製作は,ものづくりを通して、「工夫・創造する力」の育成に止まらず、ロボット製作の過程で自らが被災者の立場に立ち、安心・安全性や心理的な側面にまで深く考える必要があり、人の存在や人の命、人に対する優しさなどの情操教育の面においても大きな教育効果が期待される。
全3日間の工作教室である。初日は広島大学工学部にて実施。残り2日間は学校で実施する。
(対象:中学生 希望者)
行動・生態・進化 −昆虫の死にまね行動−
岡山大学農学部 宮竹貴久先生
身近な環境を注意深く観察すると、そこには驚くほど多様な生物が存在していることに気づく。このような「生物多様性」を維持していくことが、生態系の保全、自然との共生をはかる上で、大変重要な意味をもっていることは、今日では疑いようのない事実とされている。講師の先生は、進化生物学の立場から、様々な環境に現存する生物多様性の謎解きに挑戦してこられた。
この講座のねらいは、昆虫の行動に見られる「多様性」を知り、昆虫の行動を解析することから、その行動の適応的な意味を探り、そのような行動を生んだ進化のしくみを考えていくというものである。科学的思考力、進化的な考え方の涵養である。進化は生物学の中心的課題であり、現在では生物学の多くの分野、たとえば生態学、行動学、社会生物学、生理学などでも、「適応戦略」という視点から研究を進めていくことが当たり前となっている。
また,今回取り上げる昆虫(カメムシ,ゾウムシ等)は、我々の身近に暮らしていながら、普段その生態を詳しく観察することのないものたちである。これらの昆虫の生態を知ることにより、身のまわりの生物多様性を再確認していくこともこの講座のねらいである。
(対象:中学校2年選択理科)
計算しない数学,マルチメディアな数学 −パソコンで学ぶグラフ理論−
横浜国立大学教育人間科学部 根上生也先生
数学という教科について,「紙と鉛筆でひたすら計算する」といったイメージを持っている人は多く,このようなイメージが,いわゆる「数学嫌い」を生み出す一つの原因となっている。しかし本来,数学は,将来様々な問題に直面したとき,目の前の対象について厳密に深く考え,議論したり,また,柔軟な発想や工夫を生み出す力を養う教科であり,「紙と鉛筆で計算」しなくても数学はできるし,数学を楽しむこともできる。
「グラフ理論」という分野で世界最先端の研究をされ,数学教育に対しても上記のようなお考えをお持ちの講師が伝える「数学の面白さ」は,私たちの想像を超えるものであり,皆さんの知的好奇心を大いに刺激し,数学に苦手意識を持っている生徒に対しても興味・関心を高める契機となるに違いない。
第1日目は,「計算しない数学,マルチメディアな数学」と題した講演をおこなう。「計算しない数学」では,学校で学ぶ数学のスタイルにはこだわらない,自由な発想で展開される数学の存在を伝えることがねらいである。「マルチメディアな数学」では,4次元体験,自作の小説や映画など,様々な媒体を用いた数学を提示し,第2日目への活動の動機付けとする。
第2日目は,PC教室で,「パソコンで学ぶグラフ理論」と題した「講義+生徒の活動」をおこなう。内容は,「グラフ理論」の入門部分を,生徒各自がPCソフトを利用しながら体験し,グラフ理論に関するいくつかの問題をそのソフトを利用して考察する。この活動は,第1日目の講演「計算しない数学,マルチメディアな数学」を具体的に体験させるものである。
(対象:中学生・高校生希望者)
広島大学附属福山中・高等学校