体験グローカル とは


 研究の中心課題の一つとして「4年体験グローカル」の開発に取り組んでいます。「体験グローカル」は,当校の高等学校におけるSGH課題研究入門講座と位置づけているプログラムです。
 
<<平成27~28年度の実践>>
 平成27~28年度の体験グローカル(体験GL)では,① 備後発「技」,② 備後発「特許」,③ 備後発「環境」,④ 備後発「食」 の4つのテーマについて講義と講演,課題の提出を行いました。
 研究は班(原則:5人)ごとに実施します。夏休みには福山市内の企業を訪問し,実地調査を実施します。各班の生徒は5つの実地調査先の中から1つを選択し訪問します。各班ですべて(5つ)の実地調査先をまわるようになっています。
 上の4つのテーマについて学習したのち,各グループで課題を設定し,問題点や新たな提言などをまとめ,発表会にて発表を行います。論文形式にまとめたもの,プレゼンテーションの作成などを各グループで協力して準備します。プレゼンテーションは発表会で使用し,論文形式でまとめたものは論文集にまとめます。
 
<< 平成29~の実践 >>
 平成29年度からの体験グローカル(体験GL)では,これまでの2年間の実施の成果と課題を受けて1年間の活動の見直しを行いました。
 
○ 2年間「体験グローカル」を実施しての課題・改善点は次の2点です。
1.テーマとしていた「技」「特許」「環境」「食」は,特に「技」と「特許」をテーマとしたが生徒(班)の課題研究が,調べ学習で終わってしまう形になりやすく,発展的に取り扱うのが難しいと感じました。
⇒ 昨年度までテーマごとに協力いただいた企業(技;ホーコス株式会社,特許;天野実業株式会社,環境;株式会社エフピコ,食;株式会社中島商店)との連携は継続しつつ,さらに福山市役所とも連携し,テーマを「世の中にあるモノ・サービスと社会とのつながりを読み解く」の1つに見直しました。
2.課題研究・成果発表におけるねらい(ゴール)が具体的でないという反省が出ました。それが生徒の研究活動の進め方,教員の指導の在り方についての不明瞭さにつながっているのではないかと考えました。
⇒ 課題研究の活動とそれに伴うレポート作成に関する具体的な評価基準を担当する教員全員で改めて見直し,生徒・教員ともに共有することで活動・指導に見通しがもてるようにします。
⇒ 成果発表に関する具体的な評価基準を担当する教員全員で改めて見直し,生徒・教員ともに共有することで活動・指導に見通しがもてるようにします。
 
<< テーマ >>
 「世の中にあるモノ・サービスと社会とのつながりを読み解く」

 
<< 課題研究の視点 >> 企業や行政の取り組みが…
① ○社会をどう変えているか(どう変えたか・どう変えようとしているか)
  ●社会の変化にどう応えているか(どう応えたか・どう応えようとしているか)
 
② ○社会をそのように変えようとする背景には何があったのか(なぜ,変えなければならなかったのか)
  ●社会の変化の背景には何があったのか。(なぜ,そのような社会の変化があったのか)
 
③ 企業や市役所からの講師による講演に関連して,興味関心のある社会事象や社会問題を見出し,テーマを設定し,班による研究活動を通して「モノやサービスと社会とのつながり」や解決策について考察する。
 
注 *○・●は,次の2つのパターンでの提案を想定しています。
   ○;社会問題を読み解き,その問題の解決策の提案を行う
   ●;社会や消費者のニーズを読み解き,そのニーズに対する提案を行う
 
*「企業や行政の取り組み」は,モノやサービスの提供だけでなく社会貢献活動(CSRなどのすべての活動を含みます。
*すべての研究が,①→②→③の順序で進むとは限らず,興味・関心のある社会問題を起点として「興味・関心のある社会問題が,なぜ問題なのか(なぜ解決しなければならない問題なのか)」を追究する中で提案を導き出したり,世の中の成功事例や失敗事例を分析する中で提案を導き出したりする流れの研究でもよいことにしています。
 
<< 年間の流れ >>
○ 年度当初には,協力していただく企業・行政機関から講師をお招きして,「課題研究の視点①」から講演を実施します。すべての講演が終了後,学んだことや,興味関心をもったこと,疑問に思ったことなどから各班の研究テーマを設定し,課題研究を進めていきます。夏休みには,班の課題研究を進めるにあたって最も影響を受けた講演の企業や市役所を訪問する実地調査(企業訪問)を行います。また,1学期の残りの時間では,訪問先についてさらに詳しく調べたり,「課題研究の視点①・②」から当日質問したりすることを検討します。
○ 夏休み以降から研究テーマに関する情報収集・分析や班独自の実地調査などの活動を行い,2学期の間に研究を深めレポートを作成します。また,2学期後半より発表に向けた準備も同時に進め,3学期に成果発表を行います。
 

体験GL 2017 「エフピコ株式会社」講演 2017.04.25


 2017年度の4年「体験グローカル(体験GL)」が始まりました。2回の入門講座に続き,今回は,食品トレーでエフピコ方式の循環型リサイクルを確立する「エフピコ株式会社」の松尾和則様と藤井宣裕様にご講演いただきました。
 松尾和則様からは,社会の環境問題に対する関心が高まる中で,行政や他社に先駆けてトレー分野のリサイクルシステムを確立してきたことや,家族形態の変化などに伴う社会のニーズの変化にいち早く対応して多様なトレー開発をしてきたことが企業の成長を支えてきたことを,具体的に製品を資料として生徒にも触れさせながら説明していただきました。そして,その成長を支えた背景には,明確な経営ビジョンがあることや,「現場第一」「顧客第一」といった社員と消費者との距離感を大切にされていることを話してくださいました。また,雇用の面では障害者雇用を積極的に行っていることも話していただき,企業の成長の在り方や,企業と社会との関係の在り方について生徒は関心をもって講演を聴くことができました。講演後には生徒から活発な質問があり,放課後も時間が許す限り,控室で講師とひざを突き合わせて話をする生徒もいました。
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体験GL 2017 「天野実業株式会社」講演 2017.05.02


 今回は,フリーズドライを中心に乾燥食品で独自の技術を誇る「天野実業株式会社」の畠中和久様にご講演いただきました。
 講演は,「天野実業のイノベーション」と題して,「天野実業の事業展開の背景に何があったのか」,「事業展開するにあたっての困難をどのように克服したか」,そして,「自社の技術・商品が社会にどのように貢献しているか」の3点から話をしていただきました。話の中では,天野実業がフリーズドライ技術の開発を推進した経緯や,その技術開発で直面した問題,技術を活用した市場開拓を図るための特許戦略など,企業がもつ技術や経営戦略について具体的な事例をもとに説明していただきました。また,モノづくりの企業として「消費者のニーズに応え喜んでいただくこと」が社会貢献の一つであり,そのためには真に「消費者視点・起点である」ことが大事であることを最後に生徒に伝えてくださいました。
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体験GL 2017 「福山市役所」講演 2017.05.16


 今回は,未来づくりの目標として「活力と魅力に満ちた輝くまち」を掲げる「福山市役所」企画政策課の髙橋遼平様と杉原由識様にご講演いただきました。
 「第五次福山市総合計画 人が輝き 夢をはぐくむ未来創造都市 ~ばらのまち 福山~」をテーマに,福山には歴史や伝統,モノづくりなど様々な分野において,日本を代表するもの,誇れるものが数多くあることを紹介していただく一方で,福山市も少子化・高齢化が他人事ではないこと,そこから様々な課題が現状として表れてきていることを具体的なデータを示して説明していただきました。そういった福山の良さと課題に対して「行政として何ができるか」を考え,今取り組んでいること,そしてよりよい未来の福山に向けてこれから取り組もうとしていることを説明していただきました。
 講演から,福山市にはよさや強みがたくさんあること,それらを市役所だけでなく企業や市民が一体となって活用していくことが重要であったり,福山市という単位だけで考えるのではなく,備後圏域といったより広域的な枠組みで地域を考えていくことが重要であったりすることを生徒は学ぶことができました。
 講演後には,質疑応答の時間に質問できなかった生徒数名が控室で講師を囲んで質問に答えていただくだけでなく,高校生らしい発想・アイデアを講師に提案し意見を交換する場面もありました。
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体験GL 2017 「株式会社中島商店」講演 2017.05.30


 今回は,備後特産品研究会を軸とした研究会を備後各地域に擁し、「ジャスト・オン・デマンド」システムによる、新たな地域循環型ビジネスモデルの確立に向け、研究を重ねておられる「(株)中島商店」代表取締役社長 中島 基晴様にご講演いただきました。
 「特産品で地域を元気に!~Bingo Spirits!~」をテーマに,人口減少社会の中で,地方創生や地域の活性化をめざして,福山市を核とした8市町からなる備後圏域の連携による取り組みが行われていること,その中で,地域の特産品の活用の在り方について様々な機関と連携して取り組まれていることを話していただきました。特に,特産品を生産する第1次産業を維持すると同時に,それを加工・流通につなげる第2次産業・第3次産業までが一体となった「第6次産業」を形づくるために苦労されていること,特産品の販路を拡大するために,付加価値となるストーリーを掘り起こしたり,産官学で協力して商品開発に取り組まれたりしている工夫などを具体的に説明していただきました。
 講演の最後には「今取り組んでいることは,将来の地域につながり,それが将来の日本にもつながる」という信念をもって取り組まれていること,そして,「将来どこに住んでいても,どんな仕事に就いていても,何らかの形で地域のことを考えたり・携わったり・貢献したりすることのできる人材になってほしい」という言葉を生徒に送っていただきました。
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体験GL 2017 「ホーコス株式会社」講演 2017.06.06


 今回は,国内の全ての自動車企業だけでなく海外の多くの有名自動車メーカーの生産活動を,工作機械の技術力で支える,生粋の“モノづくり”企業「ホーコス株式会社」の社長 菅田雅夫様と専務 唐木俊夫様にご講演いただきました。
 菅田社長からは,ホーコスが文化の異なるタイに工場を建設するまでに経験した苦労や,オンリーワン技術を磨き上げることで中小企業であっても世界を相手に戦えることを話していただきました。唐木専務からは,ホーコスが時代の変化に合わせて農機具メーカーから工作機械メーカーに事業転換したことや公害が問題視される中で環境改善機器メーカーの顔をもつようになったこと,そして,切削技術において専門性に磨きをかけ,環境にも配慮したオンリーワン技術を開発したことで,世界の自動車メーカーに工作機器を納入するようなグローバルに事業展開する企業に成長したことを説明していただきました。
 当校の卒業生でもあるお二人からは,「追求こそ成功への道のりになる」という言葉や,海外でゼロから事業を立ち上げることは苦労の連続だけれど,その中で確実に自分が成長できるからこそ,世界を視野に入れた将来を考えてほしいと生徒にエールを送っていただきました。
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体験GL 企業等実地調査 2017.08.01


 4年生を対象に,「グローバル社会での企業活動や地元産業,行政についての研究を行う」ことを目的としてホーコス株式会社(本社・本社工場),アサヒグループ食品株式会社(天野実業株式会社)(岡山工場第2プラント),株式会社エフピコ(福山リサイクル工場),福山大学(生命工学部生命工学科久冨研究室),福山市役所(企画政策課・福山駅前再生推進室・情報発信課・都市計画課・産業復興課・選挙管理委員会等)の5つに分かれて訪問しました。訪問先では,企業の方や市役所の方から話をしていただいたり、施設の見学などをさせていただいたりしました。
また、実地調査に当たり、事前に訪問先についての情報収集を行ったり、課題研究のテーマに関連させた質問をそれぞれ用意したりしていたので、質疑応答の時間には様々な質問が生徒から投げかけられました。それらに答えていただく中で、生徒は企業や行政について,地域について考察を深めることができました。学んだ内容は,これからの課題研究に活かしていく予定です。
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ホーコス株式会社
    本社・本社工場
参加者:生徒40名
    引率教員4名

(1)挨拶・会社説明
 はじめに,菅田社長よりご挨拶をいただきました。挨拶の中で,昭和20年に当時の福山市の工業団地である草戸に工場を構え農機具の製造をはじめたことや,その後工作機器や環境改善機器の製造をはじめ時代に合わせたイノベーションを行ってきていることなどをお話いただきました。また,SGH校である附属の生徒は,グローバルな視点を養って活躍してほしいとのお話をいただきました。次に担当の方より,「ホーコスの歴史や社名などの由来」「景気の波に左右されないように,事業を3本化していること」,「国内とタイをはじめとする海外事業での展開などについて」「各種製品の特長」「3事業展開による安定性,海外拠点展開による発展性,財務・自己資本のおける健全性と,バランスのとれた経営を行っていること」についてご説明いただきました。これらの話を通して,生徒たちは,日本や世界でトップクラスの出荷額を誇るホーコスの概要について学ぶことができたようです。
(2)工場見学
 生徒10人ずつ4グループに分かれ工場を見学させていただきました。機械の設計,知的財産管理,加工や検査の部門,塗装,組み立てなど,製品開発から製造・出荷までの様々な工程を実際に見させていただきました。また,マシニングセンタが金属の素材に,いろいろな大きさ,角度ですばやく穴をあける様子を見ることができました。生徒達は,iMQLの技術を実際に見ることで,加工の速さや,正確さを感じることができ,ホーコスがもっている技術力・開発力を実感しました。
(3)質疑応答
 企業訪問の最後として質疑応答の時間を設けていただきました。生徒達からは「今後の産業界の変化の見通しとその対応」「タイへ進出して,日本人とタイ人の違いを克服するために工夫している点」「海外進出でのメリットとデメリット」についての質問があり,それぞれの質問に丁寧に答えていただきました。また,引率教員からも,日本のエネルギー状況と関連して,再生エネルギー賦課金が増える中,企業の影響について,そして電力の安定性と工作機械,製品加工の精度との関係について質問があり,今後,電気自動車が普及すると電力不足が懸念され,それに対する対応も必要となるとの話をいただきました。
 今回の,企業訪問を通して,生徒たちは,時代に合わせて付加価値の高い製品の開発を続けるホーコスについてや,産業構造のこれからの変化についてなどを考えることができたようです。

アサヒグループ食品株式会社
    岡山工場
参加者:生徒39名
    引率教員2名

 アサヒグループ食品株式会社への企業訪問では,里庄町にある岡山工場第2プラントを訪れました。はじめに,合併によって7月から天野実業株式会社からアサヒグループ食品の一員になったことの紹介があり、これまで天野実業が販売していた商品はアマノフーズというブランドで販売され続けることを説明していただきました。そのアマノフーズの商品を支える技術を紹介するDVDを視聴し,会社の概要を学びました。
 その後,2つのグループに分かれ,工場の見学と,畠中岡山工場理事によるフリーズドライ技術に関する詳しい説明を受けました。見学と説明が終わると、グループで進めている課題研究に関連することや、今日の実地調査を通して抱いた疑問などについて1時間ほど質疑応答の時間をとっていただきました。
 「消費者のニーズを適切に読み解くには?」という質問に対しては、「ニーズを適切に読み解くための市場調査は、客観的に把握することが大事である」とした上で、実際にはそのニーズに基づいた商品を開発することができる技術力や、その商品の将来性を判断し、店頭に並べるかどうか最終的に決定を下す経営者の判断力といった「会社の総合力が問われている」という、ニーズを適切に読み取る工夫だけでは成功できない、企業の今についても説明してくださいました。また、「東日本大震災や熊本地震以降、災害支援について考えていることは?」という質問に対しては、より長持ちする商品の開発やローリングストック(賞味期限を考慮しながら家庭に食べ物を一定量常備する考え方)に基づいたフリーズドライ食品のセット商品を販売したり、工場が位置する自治体とは、もしもの時に施設や商品を住民に提供する地域災害協定を結んでいたりしているといったCSR(企業の社会的責任)に関することも詳しく回答していただきました。
 そのほか、社員のワークライフバランスに関してや社員のモチベーションを保つ工夫、女性が働きやすい会社にするための取り組み、グローバル化に伴う商品の海外展開の過去・現在・未来など矢継ぎ早に飛び出す生徒の様々な質問に、時間が許す限り丁寧に回答・説明していただきました。生徒にとっては、課題研究を進めていく上で有意義な時間であったことはもちろんのこと、企業や現代社会について様々な視点から話を聞くことができ、自分の将来を考える時間にもなりました。

株式会社エフピコ
    福山リサイクル工場
参加者:生徒37名
    引率教員2名

 株式会社エフピコの企業訪問では,福山市箕沖町にある福山リサイクル工場を訪ねました。
 初めに,工場の概要についてお話をしていただきました。本工場は平成5年に建設されたそうですが,その建設費は当時の利益を上回るもので,背景には会社の大きな決断があったことを教えていただきました。また,企業のトレー不買運動や,環境問題が要因となった消費者運動を乗り越えてこられた経験から,常に消費者に向き合うことが,事業や会社の成功につながると説明していただきました。次に,質疑の時間に移りました。生徒たちは,エフピコさんが実践しておられる「リサイクル」,「企業の海外進出」,「地域活性化」,「設備投資」,「障がい者雇用」など,様々な観点から質問を行いましたが,一つ一つ丁寧に答えていただきました。
 質疑を終え,リサイクル工場の内部の見学を行いました。そこでは,スーパーで回収されたトレーや容器が,再生原料に戻る過程を見学しました。工場では約600t/月ものトレーの分別が,機械や手作業によって迅速かつ正確に行われていました。しかしながら,トレーや容器の回収率はまだまだ高くないようです。今回のような工場訪問を通して,一人でも多くの方がトレー回収に協力していたければとお話をされていました。またその際,「爪楊枝が刺さったり,手で割れたりする容器は回収できる。しかし,即席めんや納豆の容器は例外。」ということを強調されていました。容器の種類によっては再生不可能であり,それらは,他の工場で固形燃料等へのリサイクルが行われるようです。生徒たちは,時折メモをとりながら,工場の作業風景を真剣に見ていました。またリサイクルについての関心も高まったようで,「家に帰ってトレーが無いか探してみよう」という声も聞こえました。
 工場案内の最後に紹介された「蒸せるんです」というレンジパックは,これを使えば簡単に蒸し料理をつくることができ,その料理のレシピがクックパッドでも紹介され,広く利用されるようになったということです。このように,様々なニーズに合わせた製品開発が行われており,1年間で約1,500種類もの商品が開発されていることを聞き,生徒たちもその開発力に驚いていました。

福山大学
  生命工学部
参加者:生徒37名
    引率教員3名

 福山大学生命工学科の久冨泰資教授から「微生物を知る―酵母と発酵―」という題目でご講演していただきました。さらに、遺伝子を解析する機械や福山大学生命工学科でワインをつくる際に使う機械を見せていただいたり、目の前で酵母の働きを見られる実験をしていただいたりしました。
【生命工学科の研究内容】
 酵母と発酵について、実際によく口にする食品を例に説明をしていただきました。食品を発酵させると、保存性が高まり、うま味や甘味が加えられ、栄養価が高くなります。発酵させる際に用いられるのが酵母菌や乳酸菌、麹菌といったものがあります。
【研究室見学・実験】
 酵母菌を用いて行われているワイン造りのための機械やパン酵母として使える酵母菌を見つけるための研究を行う機材、遺伝子を解析するための機械の説明をしていただきました。
【大学と企業の連携】
 大学で行われているアカデミックなお話の後、ぬまくま夢工房・福山市・福山大学の3つが連携し、福山バラ酵母を見つけパンを作ったことを大学の視点から聞きました。ここでは、地域の宝探しをすることが地域を活性化していくことにつながることを知りました。 バラは香りが強く咲いている時間が長いからこそ酵母を運んでくる昆虫たちを引きつけます。それゆえ、バラから多くの野生酵母を採取することができます。その酵母1308種類野中から8種類だけパン酵母に適していたと実験でわかりました。この8種類のパン酵母が地域の宝の一つなのです。実際にパンを試食し、生徒たちは大変おいしいと感動していました。
 現在、地方にある中小企業が20年後まで存続させることは大変難しいことです。だからこそ、大学がアカデミックな視点から地元の企業の行っていることの裏付けをしていく必要があるということを学びました。

福山市役所
参加者:生徒38名
    引率教員4名

 福山市役所と市民参画センターを訪問しました。事前に生徒が考えている研究テーマおよび質問事項を市役所で調整役をしていただいた企画政策課髙橋様にお伝えしていたので,その質問に個別に答えていただけるよう複数の課の担当者に,丁寧なご対応をいただきました。
 バラによる福山市のPRを研究テーマに掲げた班は,市民参画センタ―にて説明を受けました。福山市の公式キャラクターであるローラちゃんも駆けつけてくれました。他の班はまとまって市役所に入り,各課に分かれての活動となりました。生徒が考えている研究テーマは,福山市の人口減少対策・少子高齢化と人口減少(2つの班で実施),福山駅前の有効活および福山駅の活性化について(2つの班で実施),バラによる福山市のPR,福山市の医療体制と子育て支援,投票率の低さ、観光で集客を図るなどでした。
 駅前の有効活用および福山市の少子高齢化と人口減少について研究テーマに設定した班には、福山駅前再生推進室、情報発信課、都市計画課、産業復興課から6名の担当者が質問に対して答えを返してくださったり、質問に関連する事柄の具体を示してくださったりしました。
 投票率の低さを研究テーマに設定した班では、選挙管理委員会が対応してくださいました。生徒からの質問事項では、『2年後に投票権を持つことができるようになるものの、初めて投票するにあたっては、何をどう行ったらよいか分からず不安に思っている人が多いから、初めての人を対象に、選挙の手順や知っておくべきことを学ぶ日を設定してもらえれば、不安を解消して投票に臨める。』などと思いを語った生徒に対しては、福山市としては、若い有権者に不安思いを消せるように対策を検討していること、選挙の手順が書かれている「選挙パスポート」を他県が作成しているものを参考にして、福山市を検討して、高等学校の3年生に配布したいと考えていて、図解入りを検討し、かなり具体的にこの取り組みが進んでいるとの説明も受けました。

体験GL 2016 入門講座 2016.04.26


 2016年度の4年「体験グローカル(体験GL)」が始まりました。第2回(2016年4月26日)は,昨年に引き続き入門講座の講演として,広島大学大学院国際協力研究科 藤原章正先生にお話しいただきました。
 広島大学が行っている「たおやか(TAOYAKA)プログラム」の取り組みから、これからのグローバルとローカルの視点・考え方を持ち合わせていくには、“オンサイト”(現場に赴くこと)、“リバースイノベージョン”(現場が必要とする技術を開発すること)が重要であることを話してくださいました。
 講演の最後には、グローバル化する世界の中で生きていく生徒に向けて、世界に飛びだすことに躊躇してしまいがちであるが「深い好奇心と、適度な楽天性をもって」その一歩を踏み出してほしいと生徒を後押ししてくださいました。
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体験GL 2016 備後発「技」 2016.05.31


 ホーコス株式会社より当校の卒業生でもある、菅田雅夫代表取締役社長と唐木俊夫専務取締役をお招きして「企業の海外展開」についてご講演いただきました。
 講演では、菅田社長から地元の企業でグローバルに活躍する当校卒業生の社員の話をしていただきました。唐木専務からは時代に合わせてホーコスが業種転換を進める中で、オンリーワンの技術を創り出し、海外展開できる大きな企業へ成長したことをお話ししていただきました。
 生徒との質疑応答の時間では、海外に事業展開することは楽なことではないけれど、異文化の現場だからこそ自分の可能性を高めることができることや、グローバルに活躍するために大切なこととして「明るく・素直に・前向き」という社風にも触れながら後輩にエールを送っていただきました。
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体験GL 2016 備後発「特許」 2016.06.28


 天野実業株式会社より天野肇様と畠中和久様をお招きして「企業における特許戦略」についてご講演いただきました。
 講演では、天野様からは、本校の卒業生でもある立場から、後輩に向けて目指すべき姿や、これからの生き方についてお話をいただきました。
 畠中様からは、「特許戦略」をキーワードに、企業から見た特許(権利)の意義や、天野実業が他社との関係の中で特許を用いてどのように市場を拡大してきたかをお話ししていただきました。
 生徒との質疑応答の時間では、特許を介して企業同士が水面下でしのぎを削っていること、そして特許戦略には正解はなく日々模索を続けられているという実際の企業の現状をより詳しく話していただきました。
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体験GL 企業等実地調査 2016.08.24


 2016年8月24日に4年生全員を対象に,「グローバル社会での企業活動や地元産業についての研究を行う」ことを目的として実地調査を行いました。調査先は,ホーコス株式会社(本社・本社工場),天野実業株式会社(R&Dセンター),株式会社エフピコ(福山リサイクル工場),ヒロボー株式会社(ライブファクトリー),鞆の浦(対潮楼などの歴史遺産,地元産業)の5つで,課題研究班のメンバー5人が分担してそれぞれのコースに分かれました。
 それぞれの調査先では「技」「特許」「食」「環境」をテーマとして,企業の方からやガイドさんから話をしていただき,それぞれの視点から企業について,地域について考察を深めることができました。学んだ内容は,班で共有して後半から始まる課題研究に活かしていく予定です。
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ホーコス株式会社
    本社・本社工場
参加者:生徒39名
    引率教員2名

(1)挨拶・会社説明
 本社厚生棟2階において,会社代表の方からご挨拶をいただきました。挨拶の中で,ホーコスが世界に誇れる機械を作っていることや今回の調査を通して,機械がどのような形で出来上がっているのかを見てほしいとのお話をいただきました。
 次に社員の方から,「ホーコスの歴史や社名の由来」「景気の波に左右されないように,事業を3本化し,日本と海外で事業を展開していること」「技術改革の波についていけるように企業努力をしていること」についてご説明いただきました。これらの話を通して,生徒たちは,日本や世界でトップクラスの出荷額を誇るホーコスの概要について学ぶことができたようです。
(2)工場見学
 4グループに分かれ本社工場を見学させていただきました。工作機械を作るための,部品加工や検査の様子,塗装,組み立てなど,機械が出来上がるまでの様々な工程を見させていただきました。見学の終盤には,2台のマシニングセンタが実際に材料を加工する様子を見させていただきました。1台目のマシニングセンタは材料に穴をあけるための機械でした。生徒達は,MQLの技術を実際に見ることで,加工の速さや,正確さを実感できたようです。2台目のマシニングセンタは平面加工をする機械でした。金属の切子がマシンの中を舞う様子を目にして,生徒達からは感嘆の声が聞かれました。実際にマシニングセンタが加工をする様子を見ることができて,生徒達は,ホーコスがもっている技術力を実感できました。
(3)質疑応答
 企業調査の最後として質疑応答の時間を設けていただきました。生徒達からは「長い加工ラインの出荷方法」「加工ラインの出荷額」「円高やイギリスのEU離脱が会社に与える影響」「材料が変形しないための20度の部屋の温度設定の理由」「特許の取得数」「MQLによる冷却とモータの冷却について」の質問があり,それぞれの質問に丁寧に答えていただきました。
 今回の,企業調査を通して,生徒たちは,工作機械が出来上がっていく過程や,ホーコスがもつ技術力の高さ,日本や世界に信頼される付加価値の高い製品を作り続けるホーコスについて学ぶことができたようです。

天野実業株式会社 岡山工場第2プラント
参加者:生徒37名
    引率教員2名

 天野実業株式会社への企業調査では,里庄町にある岡山工場第2プラントを訪れました。はじめに,会社の沿革や天野実業の技術について,DVDを視聴し,会社の概要を学びました。フリーズドライの技術で有名な天野実業ですが,フリーズドライに限らず,さまざまな乾燥食品を研究・製造されていること,包装技術についても改良を重ね,レトルト食品や流動食の分野への進出とあわせて,宇宙食などにも関わっていることなどを説明していただきました。
 その後,2つのグループに分かれ,工場の見学と,畠中管理本部長による説明を受けました。工場見学では,フリーズドライ味噌汁の製造過程を,調理,凍結,乾燥,包装の各段階での工程や工夫について説明しながら見学させていただきました。調理の過程では,現在販売されている200種もの味噌汁製品にあわせた具材の加工が行われていること,トレイの中への具材投入は人が行い,偏りを防ぐために具材の向きなどにも気をつけていることなど,よりよい製品を製造するための努力を見ることができました。また,吸湿や劣化を防ぐため,3層構造からなる包装材を開発するなど,フリーズドライ以外のところにも多くの工夫が取り入れられていることを説明していただきました。
 畠中管理本部長からは,カップヌードルに入っているフリーズドライのエビが天野実業でつくられたことなど,天野実業とフリーズドライが発展してきたエピソードをお話しいただき,その後,フリーズドライの原理について動画を見ながら説明していただきました。
 最後に質疑応答があり,省人化できる工程を増やすことはできないのでしょうか,といった建設的な意見が出るなど,生徒にとって,工夫やアイデアを考えるきっかけとなる体験になったようです。

株式会社エフピコ
    福山リサイクル工場
参加者:生徒39名
    引率教員2名

 福山市箕沖町にある株式会社エフピコ福山リサイクルセンターを調査しました。
 始めに,会社の概要や沿革についてお話をしていただきました。かつては同業者が多く存在していた食品トレー業界において,本業一筋に専念し,ヒット商品の開発を続けてきたからこそ生き残れたそうです。リサイクル事業は当初なかなか理解が得られず,砂漠に水を撒くような思いばかりであったが,それでもスーパーなどの現場に何度も足を運びんでニーズをすくい上げたり,工場の内部を見てもらって理解を得たりと,直接顧客や消費者と対話を続けることで,次第に回収が軌道に乗っていったことも語ってくださいました。また,障がい者の雇用にも積極的に取り組んでいるとのことでした。実際に福山リサイクル工場でも多くの障がい者の方が,厳しい訓練を経て,回収したトレーの分別作業に従事されていました。
 次に工場内部を見せていただきました。工場では,分別が十分ではない回収トレーが機械や手作業で非常に効率よく分別されていました。大きな袋に入れられた食品トレーが山のように積み上げられていましたが,そこまで臭いはきつくありません。日本では,多くの人がきれいにトレーを洗って出してくれるからだそうです。このようなリサイクルが成り立つのは日本だけだともおっしゃっていました。海外から視察があった時に,なぜここまできれいな状態で回収ができるのかと驚いておられたとのことです。それでも,分別はまだまだ不十分であり,分別ができていない容器は引き取らないようにしたり,「発泡スチロール製トレーは,爪楊枝が刺さる!手で割れる!」「リサイクルできないトレーは,納豆!しめじ!即席めん!」と地道に周知活動をしたりすることで工場での分別の効率を少しでも上げるように努力をしているそうです。生徒たちは,従業員の方が手際よく仕分けをする様子や,大量のトレーが様々な形のコンベヤーで高速で分別されていく様子に,興味深そうに見入っていました。
 エフピコ福山リサイクル工場を見学した後,近くにある中国電力のメガソーラー発電所に立ち寄りました。マツダスタジアム2個分の広さという広大な太陽光パネルを見学用展望台から見渡すことができました。

鞆の浦
  対潮楼
  歴史民俗資料館
  歴史遺産や地元産業
参加者:生徒40名
    引率教員3名

 鞆の浦の実地調査では,福禅寺・対潮楼を調査した後,2つのグループに分かれ,ガイドさんの案内のもとで地元産業および歴史的建造物(旧魚屋萬蔵宅,常夜燈,岡本亀太郎本店,太田家住宅)を調査しました。また,鞆の浦歴史民俗資料館にも訪問し,館長さんの説明を聞きながら,鞆の浦の歴史についても理解を深めることができました。
〇主な調査先とその概要
【対潮楼】
 国史跡・海岸山先手福禅寺は,平安時代の天歴年間(947~957)の創建と伝えられる真言宗の寺院です。本堂に隣接する対潮楼は,江戸時代の元禄年間(1688~1704)に創建された客殿で,座敷からの海の眺めは素晴らしく,特に正徳元年(1711)には朝鮮通信使の李邦彦が「日東第一形勝(日の昇る東の国で一番の景色である)」と称賛し,のちにこの客殿を「対潮桜」と命名しました。ガイドさんの説明では,先頭に座っている生徒の位置が一番の絶景ポイントであり,柱は絵画の額として見立ててあることから,前に出すぎてしまっては,よい景色は愛でることができないといった説明を聞くことができました。8月の暑い時期ではありましたが,心地よい海風と仙酔島や行きかう船に,しばらく誰も立つことはなく,景色に見入っていました。

【岡本亀太郎本店】
 岡本亀太郎本店は,鞆の浦の名産である保命酒を造っているお店の1つです。この保命酒には,16種の薬草を使用されており,そのうちの2種の薬草は限られた人にしか知らされていなかったそうです。ガイドさんからは,当時この地で薬酒造っていた職人が,14種の薬草を使用して造ったものが養命酒であるといった説明をいただきました。また,お店の方からは,保命酒はペリー来航の際に幕府が献上したお酒であり,その歴史や味についての説明をしていただきました。

【鞆の浦歴史民俗資料館】
 鞆の浦の町が一望できる高台に位置した資料館では,館長さんから様々な展示物だけでなく,鞆の浦で行われている祭りやイベントの説明を受けました。その中でも「茅の輪」をくぐると無病息災で過ごせるといった話を聞いて,実際に何人もの生徒たちが館長さんの教えてくださった順路に従って八の字に茅の輪をくぐるといった体験もできました。

【まとめ】
 実地調査を通して,地元で活躍するボランティアガイドの方の熱意を肌で感じることができただけでなく,鞆の浦の歴史や地元産業の素晴らしさを学ぶことができました。また,実地調査中は多くの観光客を目にすることができ,地元のよさを再発見するよい機会になりました。

ヒロボー株式会社
    ライブファクトリー
参加者:生徒40名
    引率教員2名

  ヒロボー株式会社への企業調査では,府中市桜が丘にあるヒロボーライブファクトリーを訪れました。初めに,NHKの『プロジェクトX』で,産業用ヘリコプターの開発についてヒロボーが取り上げられた回の動画を視聴しました。その後,松坂晃太郎社長から会社の沿革や,経営者として会社や社員が成長するために心がけてきたことをお話ししていただきました。そして,経営基盤を確実にするため,お菓子の容器などのプラスチック事業や電源装置事業を展開していることをお話ししていただきました。
 また,社員一丸となって行う「山陽道100㎞ありがとうウォーク」の実践について,興味深いお話をしていただきました。
 その後,2つのグループに分かれ,航空機の模型や実際のホビー用ラジコンヘリ,産業用ヘリの展示物などを見学させていただきました。農薬散布用ヘリの開発が農家の負担を大幅に軽減したこと,ドローンによる輸血用の血液搬送技術の開発が昨今謳われているが,その数十年前からラジコンヘリによるその技術開発を行い,その役割を担える製品をすでに開発していること,環境にも配慮して,エンジンからモータのラジコンヘリコプターにシフトさせていることなど,社会や人のためになることを考えて,時代に合わせて技術開発をしていることを説明していただきました。
 松坂社長の講話の中にあった「人々の笑顔を追い求めてきたことが企業の成長につながった。」「失敗から学ぶことができる。」「夢を語り続ける・自ら行動する」といった言葉がとても印象的でした。今回の調査を通して,生徒は多くのことを学ぶことができました。

体験GL 2016 備後発「環境」 2016.09.13


 エフピコ株式会社より松尾和則様を講師として本校にお招きし講演をしていただきました。
 松尾和則様からは「循環型環境に向けた企業としての取り組み」をテーマに,他社が取り組もうとしなかったトレーの回収・リサイクルの仕組みを確立したこと,そのサイクルを浸透させたり,新たな商品を生み出したりするために消費者と何度も対話を重ねてきたことなどをお話ししていただきました。また,循環型社会に向けてトレーのリサイクルシステムを確立する「社会貢献」に限らず,障害者雇用も積極的に行っているという「社会貢献」も講演の中で紹介してくだる中で,これからの企業が社会で果たすべき姿をいくつも示してくださいました。
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体験GL 2016 備後発「食」 2016.10.11


 株式会社中島商店より中島基晴様を講師として本校にお招きし講演をしていただきました。
 中島基晴様からは,地域の特産品を活用してどのように地域経済を活性化させるかについて,中島様取り組んでこられてきた事例を挙げて説明してくださいました。福山の「地域資源」を有効に活用し,農林漁業者(1次産業従事者)がこれまでの原材料供給者としてだけではなく,自ら連携して加工(2次産業)・流通や販売 (3次産業)に取組む経営の多角化を進めることで,6次産業化により地域全体を元気にする「備後特産品研究会」の活動のようすを紹介いただきました。
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体験GL 2016 課題研究「クラス発表会」 2017.02.14,15


 2017年2月14日、15日に「体験グローカル」の課題研究「クラス発表会」を行いました。各クラスには5人一組の班が8つあり、2回の発表会ですべての班が研究してきたことを発表しました。
 研究の対象は、体験グローカルで学習した「技」「特許」「環境」「食」の4つのテーマに立脚しつつも、地元に関する身近なことから、国際的な問題に関するものまで班によって様々でした。10月下旬から研究活動はスタートし、インターネットや書籍等で情報やデータを収集するだけでなく、公的機関や企業を訪問したり、アンケートを依頼したりするなど学校外に足を延ばして調査活動を行い自分たちの研究を深めた班も複数ありました。
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体験GL 2016 課題研究「全体発表会」 2017.02.28


 2017年2月28日,に「体験グローカル」の課題研究「全体発表会」を行いました。体験グローカルで学習した「技」「特許」「環境」「食」の4つのテーマからそれぞれ発表グループが選抜され,以下の題目で発表しました。
 「技」:広島のオンリーワン企業 三興化学工業株式会社 ―アレルギー対策手袋 ラテックスフリー手袋―
 「特許」:特許で解決する福山の課題点
 「環境」:リサイクルの評価 ―今後の可能性と見えてきた課題―
 「食」:食糧廃棄の現状と解決策 ―消費者だからできること―
 発表では、収集・分析した具体的な数値や、海外も含めた幅広い事例をもとにして研究を進めてきたことや、企業や医療機関への聞き取り調査の結果、福山の観光地に出向いて研究者自身が現地で感じた課題に基づいていることなどが発表・報告されました。また、聞き手からは「(提示された数値から)自分はこう考えますがいかがですか」といった、自分の見解も交えて質問する姿があったり、リサイクルや食料廃棄の発表については「自分たちはどんなことに気を付ければいいか(考えていけばいいか)」というような、研究と自分をつなげた質問をしたりする姿が見られました。
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体験グローカル入門 2015.04.24


 体験グローカル入門では,次の1~5の内容を紹介し,この1年間の活動に向けてのエールを送りました。
1 グローバル化(グローバリゼーション)とは?
2 グローバル化によって・・・何が変わったか?
3 グローバル社会では,どのような人材が求められるか?
4 福山附属のSGHとは,どのような取り組みか?
5 体験グローカルでは,何を目指して,どのようなことを行うのか?

体験GL 合意形成入門 2015.05.01


 4年「体験グローカル(体験GL)」(2015年5月1日)では,入門講座の講演として「合意形成入門」をテーマに,広島大学大学院国際協力研究科 研究科長の藤原章正先生にお話しいただきました。
 講演では,7割が留学生で構成される広島大学大学院国際協力研究科で行われている研究や,国籍の違う学生同士の交流について紹介をしてくださったり,藤原先生の専門分野である交通計画学から,考えの異なる立場の人たちが合意を形成する上で大切なことを説明していただきました。講演の最後には,グローバル化する世界の中で生きていく生徒に向けて「深い好奇心と,適度な楽天性をもって」や「日々の何気ない積み重ねが,自分の可能性や世界を広げる」というメッセージを伝えてくださいました。
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体験GL 備後発「技」 2015.06.05


 最初のテーマである福山発「技」では,自動車のエンジンの製作の現場で使用され,高速で極めて高い精度での金属加工を行うことのできる工作機械を製造する,福山を代表する企業「ホーコス株式会社」の技術や海外との関わりを,唐木専務よりお話しいただきました。
 特に環境に配慮して切削に必要な油を最小限に抑える技術は,世界から高く評価されていることなど,「ホーコス」の持つ技と海外展開などについて紹介いただきました。
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体験GL 企業訪問(実地調査) 2015.08.25


 2015年8月25日に4年生を対象に,「グローバル社会での企業活動や地元産業についての研究を行う」ことを目的として,ホーコス株式会社(本社・本社工場),天野実業株式会社(R&Dセンター),株式会社エフピコ(福山リサイクル工場),ヒロボー株式会社(ライブファクトリー),鞆の浦(対潮楼などの歴史遺産,地元産業)の5つに分かれて実地調査を行いました。  それぞれの訪問先では「技」「特許」「食」「環境」をテーマとして,企業の方からやガイドさんから話をしていただき,それぞれの視点から企業について,地域について考察を深めることができました。
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ホーコス株式会社
    本社・本社工場
参加者:生徒38名
    引率教員2名

 ホーコス株式会社での企業訪問では,初めに会社についての説明を受けました。会社紹介では,映像やスライドを利用して工作機械,建築設備機器,環境改善機器の3つの部門を中心に話をしていただきました。ホーコス株式会社の特許である「ⅰMQLの技術」についても,従来の加工方法と比較してわかりやすく説明していただきました。  iMQLの技術は,切削加工における切削油剤の使用量を限りなくゼロに近づけ,環境・生産性を考慮したものであり,画期的なアイディアであるということを知ることができました。
 その後,ヘルメットと説明の音声を聞き取るためのイヤホンを装着し,4つのグループに分かれて工場見学を行いました。案内担当の方がそれぞれのグループに付いてくださり,トランシーバーを用いた説明で,工場内で機械の音が響く中でもとても聞き取りやすく,生徒も頷きながら理解を深めている様子でした。上記に挙げたⅰMQLの技術を用いた切削加工の様子も実際に見ることができ,「正確性・操縦性・安全性」を考慮した技術に,生徒も夢中で観察していました。
 最後の質疑応答では,生徒から特許に関する質問がありました。以前学習した体験グローカルでの内容を質問にも生かしており,企業訪問の意義を理解している印象でした。
 生徒たちはこの訪問を通して,今後の活動に繋がる多くのことを学ぶことができました。

天野実業株式会社 第二工場
    R&Dセンター
参加者:生徒36名
    引率教員2名

 天野実業株式会社里庄第二工場での企業訪問では,初めに天野実業を紹介するDVDを視聴し,天野実業がもつ8つの食品加工技術について説明を受けました。
 その後,参加生徒を二つのグループ分け,フリーズドライ技術に関する説明と,工業見学をそれぞれ行いました。
 フリーズドライ技術の説明では,実際の商品であるフリーズドライの味噌汁もいただきながら,フリーズドライ技術の歴史から解説をいただきました。特に,技術自体の原理の説明では,生徒が知っている化学や物理の知識を用いたり,実験の動画も使ったりして生徒にもわかりやすく「フリーズドライ(凍結乾燥)」の原理を説明していただきました。そして,そのフリーズドライ技術を用いて天野実業が即席麺の具材の開発・提供に大きく貢献してきたことや,より良い製品・より安全な製品をつくるために日々,研究開発を続けていることなども説明していただきました。
 工場見学では,フリーズドライの味噌汁がどのような工程を経て商品になるのかを,実際の工場を見学しながら説明していただきました。その説明の中では,食品を提供する企業として,徹底した品質や衛生管理をしていること,より早くお客に提供するために努力していることなどを説明していただきました。
 最後の質疑応答では,様々なことに好奇心をもって取り組んできたことを「花のフリーズドライにも挑戦したことがある」ということを例に挙げながら話してくださいました。また,「高い技術力をもっていると自負しているけれど,その技術力を常に高めたり,発展させたりしたいという意識をもって研究を進めていかないと,トップ企業ではいられなくなってしまう」という話には,生徒も真剣に耳を傾けていました。

株式会社エフピコ
    福山リサイクル工場
参加者:生徒35名
    引率教員2名

 株式会社エフピコ福山リサイクル工場での企業訪問は,環境対策室3R推進マイスターの松尾和則氏からの説明を受け,リサイクル工場を見学し,最後に質疑応答という流れでおこなわれました。
 松尾氏からの説明は,まず会社の概要,商品開発の歴史,リサイクル事業の推進,障がい者雇用などをお話しいただきました。
 商品開発の歴史の説明では,時代のニーズに応えて様々な商品が開発されてきたことを知りました。果物の汁が漏れない透明の容器,弁当の仕切りが変えられる容器などの実物を紹介していただきました。次のリサイクル事業の推進の説明では,そのためのさまざまな工夫や努力を教えていただきました。例えば,商品を配送したトラックの帰路は荷物が空になっていたので,そこでトレーなどを回収していること。トレーをきれいな状態で回収するために,どんな所にでも出向いて講演をおこなっていること。リサイクルはきれいごとだけではできない現状と,それを打破するための方策を知りました。
 工場見学では,透明容器のリサイクル工程とトレーのリサイクル工程を見せていただきました。作業のラインには,ドイツなどから輸入した機械が導入されていました。機械ではできない工程は,人間の手による作業によっておこなわれていました。回収されたトレーがきれいな状態でなかったり,色別の回収をお願いしているのに異なった色の容器が出されていたり,回収量が足りず作業ラインが一列稼働していなかったり,多くの課題があるという説明を受けました。また,福山のリサイクル工場で働く多くの人が重度の障がいをもつ人たちであるというお話をいただきました。エフピコは,障がいをもつ人たちの雇用を積極的に進めており,健常者と同じように作業ができるように訓練し,生活に困らない給料を支払っており,このような会社は日本でもまだまだ少ないというお話をいただきました。
 講義室に戻り,最後に質疑応答の時間を設けていただきました。生徒から「海外への進出は考えていないのですか」との質問があり,松尾氏からは「まず国内で覇権を握ること,そのためには40%以上のシェアが必要で,まだそこに達していない。また,外国に進出する際には,その国の宗教や文化などの違いにより,日本と同じようにはいかないので,慎重に進める必要がある」とのお答えをいただきました。
 企業における“本音”の話をたくさん盛り込んでいただき,生徒たちにとって有意義な時間になりました。

ヒロボー株式会社
    ライブファクトリー
参加者:生徒34名
    引率教員2名

 ヒロボー株式会社への企業訪問では,府中市桜が丘にあるヒロボーライブファクトリーを訪れました。初めに,会社紹介のDVDを視聴しました。また,実際にその場でラジコンヘリを飛ばしてもらい,室内を自由自在に飛び回る様子を間近で見ることができました。その後,松坂晃太郎社長より会社の沿革や,生き生きとした強い会社を作るために100㎞ウォークをはじめ様々なイベントを企画していること,今後の展望などについて話をしていただきました。
 その後,2つのグループに分かれ,航空機の模型や実際のホビー用ラジコンヘリ,産業用ヘリの展示などを見せていただきました。産業用ヘリは,農家にとって非常に負担の大きな作業である農薬散布を短時間で行うことができるということで,農協を通して多くの農家の方々に利用されているという話も伺いました。また,人命救助のためのレスキューヘリの開発にも長く取り組んでおり,血液や医療物資の運搬を行うラジコンヘリを開発しているとのことでした。他にも,燃料ではなく電池を動力源とすることで,静穏性に優れ,CO2を排出しない電動無人ヘリも開発しているという説明もありました。
 最後に,何人かの生徒がラジコンヘリを操縦する機会も設けてくださり,生徒たちは苦戦しながらも,操縦を楽しんでいました。
 松坂社長の話の中にあった「夢や志があるから人は育つ。」「挫折があるから学ぶことができる。」「製品を通して人の笑顔を見るのが大好きで,そのために夢を追い続けている」といった言葉がとても印象的でした。生徒たちはこの訪問を通して,多くのことを学ぶことができたようです。

鞆の浦
  対潮楼など
  歴史遺産や地元産業
参加者:生徒34名
    引率教員3名

 鞆の浦の実地調査では,対潮楼,魚屋萬蔵宅,常夜燈,太田家,岡本亀太郎本店,法宣寺を訪問し,ガイドさんの説明を聞きながら,鞆の浦について理解を深めました。

対潮楼
 瀬戸内海の美しさを感じることのできる場所です。
対潮楼の説明に加えて,対潮楼から見える島や山の名前,弁天島と仙酔島の歴史,朝鮮通信使の歴史,刀を拾った若者の伝説などについて,ガイドさんから説明をいただいた。鞆の浦をめぐる歴史と伝説について,理解を深めることができました。

常夜燈
鞆の浦のシンボルともいえるものである。雁木とあわせて,港としての鞆の浦について説明をいただきました。すぐ側には,最近のTVドラマで利用された建物や,映画やTVの撮影で多用される通りもあり,「TVで見たのはこれだったんだ」と,生徒は興味深く眺めていました。

太田家・岡本亀太郎本店
鞆の浦の名産である保命酒に関係する場所です。保命酒の歴史,作り方,味について説明をいただきました。この地が,日本の薬酒造りの最初期の場所であり,現在造られている薬酒はこの地で職人をしていた人が,広めたものである。保命酒は他の薬酒に比べて,用いられる薬草が多く,滋養と味に富む薬酒である。鞆の浦の食の名産について理解を深めることができました。

法宣寺
鞆の浦にある古寺です。
 鞆の浦には多くのお寺があります。法宣寺もその一つです。法宣寺の歴史,大きな松について説明いただきました。道路の作り方や建物の建て方などとあわせて,歴史ある街並みについて理解を深めることができました。

 ガイドさんの丁寧な説明を聞き,地元福山の観光地鞆の浦を,観光地としてだけではなく,歴史ある地としてもとらえる視座を生徒たちは身につけることができました。また,その地の名産品は,地理的・歴史的諸条件の中で育てられることを知ることができました。

体験GL 備後発「特許」 2015.08.28


 2つめのテーマである福山発「特許」では,フリーズドライ食品製造の日本のトップメーカーである天野実業の特許戦略を中心にお話しをいただきました。
 元社長の天野肇様からは本校の卒業生という立場から,後輩に向けて目指すべき姿や,生き方についてお話をいただきました。また,畠中管理本部長からは「特許戦略」をキーワードに,企業から見た特許の意義や,特許や他社との関係の中でどのように市場を拡大していくかをお話ししていただきました。
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体験GL 備後発「環境」 2015.09.25


 3つめのテーマとなる福山発「環境」では,食品トレーの循環型リサイクルで,企業と消費者を結ぶ独自のシステムを開発した株式会社エフピコの環境対策室 松尾様にお話しいただきました。
 エフピコでは,1990年より発泡スチロール製トレーの回収・リサイクルを行い,消費者・スーパーなど小売店・包材問屋・エフピコの4者が一体となった「エフピコ方式のリサイクル」システムは、国民全員参加型のリサイクルシステムとして定着しています。このシステムを構築するまでのご苦労や企業としての理念についてお話しいただきました。
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体験GL 備後発「食」 2015.10.23


 最後の4つめのテーマとなる福山発「食」では,地域特産品を原材料とした食品開発や地域資源の有効活用,地域ブランドの創成による地域活性化に取り組んでおられる,中島商店社長で,備後特産品研究会会長の中島様にお話しいただきました。
 「備後特産品研究会」は、広島県福山市を中心とした備後エリアの特産品開発・広報活動を通じて、地域の活性化・地場産業の活性化を図ることを目的として活動を行っておられます。
 今回は,黒船来航の際には晩餐会でペリー提督にも提供された福山特産の「保命酒」を核とした商品開発を事例としてお話しいただきました。
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「体験グローカル」課題研究発表会 2016.02.12,19,26


 4年生を対象に実施した「体験グローカル」では,「技」「特許」「環境」「食」の4つをテーマに,4月~10月の前半はそれぞれのテーマに関して教員による講義と,広島大学やご協力いただいている企業から講師をお招きした講演を実施しました。それを通じて,テーマに関する知識や,見方・考え方を生徒は身に着けました。
 11月以降,生徒は5~6人の班を編成し,4つのテーマから1つを選んで課題研究を進めました(各テーマの班の数が均等になるよう調整を行いました)。班によっては,課題研究に関連する企業や施設に冬休みなどを利用して実地調査に行ったり,企業や生徒にアンケートを実施したりして課題研究を進めました。
 2016年2月12・19日には,課題研究クラス発表会を,2月26日には学年全体で発表会を行いました。
 内容の詳細は→こちら