福富町でのサイエンスワークショップ
2020.12.22
12月13日(日),東広島市福富町にて実施した「サイエンスワークショップ」の報告です。
ワークショップのテーマは,「里山の生態系,とくに両生類の生態が人々の生活にどのように機能しているのかを知る」,「里山の地域資源や人材をどのように活かせば地域創生に貢献できるかを考える」の2つです。

このワークショップを実施するにあたって,広島大学両生類研究センター 井川 武 助教 および 近畿大学工学部 谷川大輔 准教授,広島大学の学部生および大学院生3名,そして当校の生物担当 田中 伸也 先生に協力いただきました。また,当校校長の清水 欽也 先生,学友会本部役員4年生9名にも参加していただきました。生徒のみなさんにはこのワークショップのモニターとして参加してもらい,将来的に私が開発,実践したいと考えている「産官学連携による地域共創サイエンスツーリズム」の企画案の創出をお願いしました。

ワークショップ当日までに,事前学習として,田中先生には「生態系における両生類の役割」について講義いただきました。里山の生態系において,カエルやサンショウウオなどの両生類は,成体では昆虫などの小動物を捕食する消費者としての役割を果たしますが,幼生(オタマジャクシ)のときには動植物の遺骸などの分解者でもあり,里山の湖沼の水質維持に貢献していることなどを学びました。すなわち両生類は,食物連鎖において上位と下位をつなぐ重要な役割を担っているということです。

ワークショップ当日,まず午前中には井川先生にご指導いただき,福富町を流れる沼田川上流に生息する両生類探索の手法やマナーについて学びました。時期的に両生類は冬眠を始めるころですが,参加者全員で実際に沼田川に入って探索したところ,アカハライモリなどの両生類を見つけることができました。



フィールドワーク終了後,徒歩で「星降るテラス」へ移動し,「福富物産しゃくなげ館」特製の福富産食材をつかったお弁当をいただき,地産地消について考えました。星降るテラスは,福富町への移住促進や福富町の情報発信の拠点,そして日本文化や田舎暮らしを体験できる場として活用するための,谷川先生が所有される古民家スペースです。星降るテラスは,福富町の自然の魅力を近隣地域に発信するために,私自身もときどき理科出前授業をさせていただいています。囲炉裏やかまど,五右衛門風呂も備えた魅力的な古民家です。
 


お弁当を食べながら,参加者全員でざっくばらんに,里山の地域資源や人材をどのように活かせば地域創生に貢献できるか,意見交流を行いました。以下に,参加生徒の感想や意見の一部を示します。( )内の言葉は,生徒の意図がより伝わりやすいよう加筆しました。

・小川の生物観察は貴重な観光資源であり,自然との関係を忘れてしまった都会+現代人にとっては大きな需要があり,地域活性化につながると思う。今回の行程は,両生類について知るのと田舎の自然の堪能という2つのことに興味関心を持てるようなものでした。それは(ツアーに参加する)目的が違う人が(出会い交流することで),別のことに興味をもつ可能性があるということです。
・古民家をリノベーションして宿泊施設やレジャー施設にする取り組みはあちこちで耳にしますが,さらなる地域創生のためには,(地域の方々と)積極的にコミュニケーションをとろうとする姿勢が必須であると感じました。(地域の方々は)困ったときに力を貸してくれる頼もしい味方だと思います。常日頃から挨拶をし,その地域の情報収集を自分から行うことで地域の方々の信頼を得て,互いに助け合える素晴らしい関係を築くことができるはずです。
・日本には福富町のような田舎はたくさんあります。その中でどれだけ魅力を発信し,アピールできるかが鍵だと思います。今回のツアーは,両生類の観察と星降るテラス(古民家再生)の2本立てでした。このように「何か1つの事+星降るテラス」という工程を立てればよいと思います。写真好きの人に焦点を当てて「田舎の日本の風景を撮ろう」や地域の人たちと協力して農業体験など,都会では味わうことのできない体験を星降るテラスと一緒にするとよいと思います。

今回のワークショップを踏まえ,将来的に地場産業や自治体,学校,そして地域の方々とのパートナーシップをより良質なものに改善していきながら,地域共創の一助となるような「サイエンスツーリズム」を開発していきたいと考えています。現在,次の企画を考案中です。引き続きよろしくお願いいたします。
(文章:大方 祐輔)
2020.12.22 09:20 | 固定リンク | 近況

- CafeLog -